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【都市伝説斬り】ゼークトの組織論 - 有名な言葉だが都市伝説だった?

こんにちはマスター、蓬莱です。

マスターはSNSやちょっとした経営セミナーや戦略サイト、またはアニメ関連で人を4つのタイプに分けて組織に活用する、以下の言葉を聞いたことはないですか?

「軍人には4つのタイプがあり、有能な怠け者は指揮官が向いている、有能な働き者は参謀に使える、そして、無能な働き者は連絡将校か下級兵士が務まるだろう、だが、無能な働き者は銃殺するしかあるまい」

これは「ゼークトの組織論」と呼ばれ、ドイツの軍人であり、政治家でもあった上級大将ハンス・フォン・ゼークトが語ったと言われ、世界中に広まっています。なお、なぜ無能な働き者が悲惨なオチになるのかは、間違った事を次々とやらかして被害が大きくなってしまうからという意味が込められています。

ところがこの言葉、ゼークトが語ったという事を裏付ける記録が無く、しかも最初は英国で広まったのが後からドイツに逆輸入されており、「誰が言ったか判らない都市伝説なのでは?」とも言われているんです。

今回は「無能な働き者は銃殺するしかないだろう」というショッキングなネットミームで有名になった「ゼークトの組織論」について調べてみました。

ゆ る さ な い

ハンス・フォン・ゼークトはデンマーク半島の付け根に位置し、デンマークとの国境を持つドイツの最北端の州、シュレースヴィヒ州にて、1866年、プロイセン陸軍将校の息子として生まれました。その後、プロイセン王国はドイツ帝国に組み込まれ、陸軍の将校の元に生まれたハンスは1885年に陸軍に入隊、そこから陸軍大学に進み、第一次大戦が勃発したときは第3軍団の参謀長を努め、そこからオーストリア=ハンガリー第7軍参謀長、オスマン帝国総参謀長と軍歴を積み上げ、第一次大戦の敗戦後にはドイツ側の陸軍代表として出席、その後の陸軍の再編成に尽力しました。

ハンス・フォン・ゼークト

ところが、1926年にドイツ政府から独断を避難され軍を退役、その後、軍事評論家として活動していましたが、その腕を買われて蒋介石からスカウトされ、彼が率いる中華民国の国民政府軍の再編成に尽力しますが、体調を壊し、祖国に帰って、1936年の12月にベルリンで亡くなっています。

軍事的な情報やノウハウだけでなく、諸外国の情報にも通じていた彼ゆえに、「無能な働き者は~」で広まっている四か条にゼークトの名前がつけられたのは、ある意味自然な流れだったのかも知れません。

では、この言葉は、ゼークトで無いなら、いったい誰が最初に言ったのか?

ほんっと迷惑しちゃうっ

実はこの言葉は出典があり、しかもそれは1932年、もしくは、1933年に刊行されたドイツ・ベルリンの新聞とされ、その引用として1933年に英国で刊行された軍事紙「アーミー・ネイビー・アンド・エアフォース・ガゼット」にて掲載されたことが明らかになっています。またその直後にアメリカの軍事紙にも掲載され、そこから世界に広まったそうです。つまり、初掲載はベルリンとされていますが、広まったのは英国と米国からだったのです。

この発言者は1878年、つまり、ゼークトが誕生した12年後に、ドイツのメクレンブルク=シュトレーリッツ大公国に於いて、代々、軍人を出してきた貴族の家系、エクヴォルト家にて誕生した、生粋の軍人、クルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルト。

クルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルト

ハンマーシュタインは1888年に10歳で陸軍幼年学校に入り、陸軍大学を卒業後に参謀将校として活躍、実績を積み上げて、歩兵大将、上級大将、一時期は陸軍総司令官まで上り詰めた骨太の軍人でした。

また、ナチス党の台頭に対し、中立を守りつつ、譲れないところは譲らない堅物でもあったので、辞表を出さねばならぬほど政治的に追い詰められ、1933年に退役しています。

ハンマーシュタイン(左端)1929年第一次世界大戦戦没衛生兵記念碑除幕式にて

その後、ナチスへの抵抗運動を進めていましたが、第二次大戦中のドイツに於いて1943年に癌で亡くなりました。ですが、棺がハーケンクロイツの旗で包まれるのを嫌って軍人墓地への埋葬を拒否し、ヒトラーから贈られた花束を地下鉄の駅に忘れたといってナチスからの献花も避けたという逸話を残している凄い人でした。

「ゼークトの組織論」として広まったハンマーシュタインの記事はこうです

あるとき、どのような視点で部下の将校を判断するのかと訊かれたとき、ハンマーシュタインはこう言った。

「私は部下を4つのタイプに分けるんだ。利口な将校、勤勉な将校、バカな将校、怠け者の将校にね。」

「たいていの場合、ふたつのタイプが組み合わさっている。まずは利口で勤勉なやつ。これは参謀本部に必要だ。次はバカで怠け者。こいつはどんな軍隊にも9割は居て、決まりきった仕事に向いている。そして、利口で怠け者というのがトップのリーダーとして仕事をする資格がある。難しい決定をするとき、クリアな精神と強い神経を持っているからね。で、用心しなきゃならないのが、バカで勤勉なやつだ。責任のある仕事を任せてはならない。どう転んでも災いしか引き起こさないだろうから。」

ハンマーシュタインが軍人の特性と組織における役職について副官に述べたとされる言葉

この記事には「将校の4分類」というタイトルが付き、そして、ハンマーシュタイン・エグヴォルトの名前が記載されないまま掲載されたモノも多かったので、彼の名前がセットで広まることはなかったようです。

また、ここでの「バカで勤勉なヤツには責任のある仕事を任せるな」が「銃殺しろ」に変わったのはどうやらこれが、日本に伝わってから、しかも1990年代の日本の軍事コミックからみたいですよ。

今回はピクシブ百科事典の「無能な働き者」とウィキペディアの「ハンス・フォン・ゼークト」および「クルト・フォン・ハンマーシュタイン」などの項目からお話しました。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

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それではまた、らいら〜い🖐

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