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【TikTok難民】なぜアメリカ人はTikTokから中国の「小紅書」(RED Note)に「逃げた」のか、深ぼれば原因は中国の「一人っ子」政策なのか...

事件背景


2025年1月初、アメリカ政府はTikTokが「国家安全保障」や「個人情報保護」にリスクをもたらすとして、その運営を禁止しました。この措置により、アメリカ国内でTikTokを使用していた1億7,000万人のユーザーが大きな影響を受けました。特に18歳から29歳の若年層が全体の約60%を占め、代替プラットフォームを探す動きが広がりました

このような背景の中、2025年1月13日、「小紅書(RED)」(Xiaohongshu、日本語発音:シャオホンシュ)はアメリカのAppleアプリストア無料ランキングで急速に順位を上げ、一時的にMetaの「Threads」を超えて首位に立ちました。

中国問わず、海外でREDのアメリカユーザーの激増に注目を集めた

また、小紅書では「#tiktokban」や「#tiktokrefugee」(TikTok難民)といったハッシュタグを通じて、TikTokから移行したユーザーやクリエイターが次々と参加し始めました。 Sensor Towerのデータによれば、アメリカでの小紅書のダウンロード数は前週比で2倍に増加し、過去2日間で70万人以上の新規ユーザーを獲得しました。さらに、1月16日時点で「#TikTokRefugees」というトピックには20万件以上の投稿があり、総閲覧数は2億回を超えています。「TikTok難民」と呼ばれる流入は現在も続いています。

REDのタイムラインでは、一部欧米クリエーターのコンテンツに埋められ、アプリ内のライブ配信でも英語でコミュニケーションをとるチャットルームもが多くなった

この現象は、複合的な原因によって生じたものです。

アメリカユーザーの離脱理由として:

1.アメリカ政府によるTikTok禁止
TikTokはアメリカの若者に非常に人気があり、日常生活に欠かせないアプリとなっています。しかし、アメリカ政府は「ユーザーの安全」や「個人情報保護」を理由にTikTokの使用を禁止しました。これにより、アメリカ人は言論の自由やアプリを選ぶ権利が奪われたと感じ、抗議の意を示すため別の方法を模索しています。

2.アメリカインフルエンサーにとっての大きな損失
TikTok禁止は、アメリカのインフルエンサーにとっても深刻な課題です。彼らは、メディアとしてのTikTokを失うことでマネタイズ収益も失いました。このため、怒りを覚えるインフルエンサーが多く、政府への抗議行動を呼びかけています。一部のインフルエンサーは新しいマネタイズプラットフォームを見つけるニーズも高めています。

3.他のSNSへの不満
TikTokの代替として検討されたPinterestやInstagramには、多くの問題が指摘されています。Pinterestは広告が多く、Instagramは短動画が商業化されすぎて退屈であると感じるユーザーが増えています。また、これらのプラットフォームがTikTok禁止の推進者と見なされ、反発を招いています。

4.Red Note(小紅書)の誤解による流入&RED登録の利便性
アメリカの一部インフルエンサーが抗議提案をする際、中国版TikTokをRed Note(小紅書)と誤って呼んだことが原因で、多くのアメリカ人がRed Noteが中国版TikTokだと勘違いしました。この結果、抗議の意を示すため、わざと中国のアプリ(Red Note)に個人情報を提供する行動に出たのです。さらに、Red Noteは中国の電話番号を必要とせず、簡単に登録できる仕組みとなっており、この使いやすさも大量のアメリカ人ユーザーが短期間で流入する要因となりました。
(↓この記事も参考に)

「なぜREDなの?」 アメリカ人が「小紅書(RED)」を選ぶ理由:

1.中国ユーザーの温かい歓迎
小紅書(RED)の中国ユーザーは英語でコミュニケーションを取る努力をし、外国人ユーザーへの「いいね」やフォローで応援しました。外国人が少ない中国SNSで「中華式オモテナシ」の温かい言葉で迎え入れる姿勢がアメリカ人に好印象を与えました。

中国の「独生子政策」により、若年層の教育水準が向上し、英語能力も普及しています。小紅書の中国ユーザーは英語での交流に積極的で、アメリカ人ユーザーに対し同情と親しみを持って接しています。この結果、初期段階でアメリカ人ユーザーと中国人ユーザーの間に良好な交流が生まれました。

2.ユーモアを通じた親近感
中国ユーザーは「猫税(cat tax)」としてペットの写真投稿を求めたり、表情パックでのやり取りを通じてアメリカ人と共感を深めました。アメリカ人も猫や犬などのペットを持っているため、ペットの写真を共有することが言語の壁を超えた共通の話題となりました。このようなユーモアややり取りは、両国ユーザー間の交流を促進し、親近感を生み出しました。

「ねこ税」のネタで盛り上がる中米のREDユーザー

3.幅広い日常話題で交流&真実状況の交流
アメリカ人ユーザーは中国人と生活費、医療保険、職業収入、食文化などについて具体的に質問し合う中で、次第に中国や中国人に対する新たな理解を深めました。彼らは、アメリカ政府が主張する中国のネガティブなイメージが誇張されたものであり、実際の中国や中国ユーザーははるかに開放的でフレンドリーだと気づきました。一方、言論の自由を標榜するアメリカ政府が提供する情報の信頼性に疑問を持つようになり、その矛盾に憤りを感じています。

4.インフルエンサーとしての活用
小紅書に参加したアメリカ人の中には、すでにインフルエンサーとしての経験を持つ人や過去にバズったコンテンツを作成したことのある人もいました。彼らは音楽制作、特技の披露、アニメーションなどの人気コンテンツを投稿し、それを活用して多くの「いいね」を獲得しています。

例:欧米のミュージシャンユーザーは既存の高質なコンテンツを字幕を通訳したままアップロードすることにより、REDでは新規コンテンツになりファンを獲得できた

また、小紅書には女性ユーザーが多いため、フェミニズム関連の動画を投稿しても否定的なコメントを受けにくく、むしろ支持されることが多い点も評価されています。さらに、中国のユーザーがフレンドリーで敵意が少ないと感じられることも、彼らがこのプラットフォームを好む理由の一つです。

5.アメリカ人の礼儀正しい入場
アメリカ人ユーザーは、TikTok禁止に抗議する目的で小紅書に参加しているため、初ポストする際には礼儀正しく、「我々は難民のような存在ですが、このプラットフォームを使用させていただくことをお許しください」といった姿勢を見せました。このような態度が中国ユーザーに好印象を与え、両者の間の壁を取り払い、より本音での交流を促進しました。

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