コーヒー豆をビール瓶で保存する理由
「焙煎直後の豆をすぐにビール瓶に入れて保存し、最低1週間経ってから販売する。賞味期限は未開封で焙煎日から2年。」
というスタイルを始めて、6年になります。
長い間、コーヒー豆は焙煎直後が「一番新鮮」で、そこからは時間が経つほどに劣化していくと思われてきていました。
確かに、コーヒーの袋に入れておいたり、ジャーなどの保存容器に入れておくと、時間の経過とともに香りが薄くなってドリップするときに膨らまなくなることは事実です。
劣化とは「空気に触れて酸化する」ことや紫外線に当たって「痛む」ことだったり、「湿気を帯びて風味を失うこと」だったり「高温にさらされて味が悪くなること」だったり。そして何よりも、焙煎後に豆から発生する二酸化炭素ガスが空気中に放出されて香りを連れて逃げてしまうことが、味わいが変わっていく大きな要因でした。
ビール瓶を選択した理由
クラフトビールの店でもある当店では、ビールが嫌がる環境とコーヒー豆が嫌がる環境が似ていることに気づいていました。
例えば、日光に当たると「スカンク臭」と例えられる好ましくない香りが出てくるビール。コーヒー豆も紫外線で味が変わります。
空気に触れている時間が長いと「濡れた段ボールのような」と例えられる酸化臭が出るビール。コーヒーも酸味の質が悪くなります。
ビール瓶に使われる茶色いガラスは遮光性が高いとされています。その瓶にビールで使うCO2のガスを注入しそこに焙煎豆を詰めることで、空気を追い出して王冠を閉めることができます。
この封入の手段で得られるアンチ劣化の要素は、
①空気がない状態で豆を保存できる
②光の影響を受けにくい
そして最も嬉しいことは、
③ガスをまったく逃がさないので、香りが逃げない
ということでした。
加圧してコーヒー豆をエイジングする理由
もうひとつ、大切な役割がビール瓶にあります。
豆が発するガスが瓶内に満ちて圧力となり、豆に圧がかかり、
「香りの油分がしっかり豆に定着する=味わいに深みが出る」
という「加圧」して「熟成」することが、ビール瓶の中で起こるのです。
実際、異なる環境下で保存した豆を飲み比べると、味わいの差は歴然です。
①一般的なコーヒーバッグ
②ジャム瓶
③ビール瓶
と、3種の保存方法で焙煎してから3週間後に飲み比べると、
一般的なコーヒーバッグとジャム瓶も開封時に良い香りがするのですが、抽出してみるとビール瓶保存の豆が明らかに風味の層に厚みがあり、甘味が長続きしていました。
(この実験に関しては別途記事に載せたいと考えています)
3Rを目指せるビール瓶保存
このビール瓶の保存で、結果的に無駄が少なくなることにも気づきました。
〈店として〉
①賞味期限が2年設定できるので、在庫しておける(焙煎スケジュールが立てやすい)
②数か月経ってからの豆に得難い味わいの深みを感じるので、日が経った豆をむしろ美味しく使うことができる
③卸販売で客先にもロスが出にくいことを付加価値にできる
④瓶は洗浄してリユースできるので資材の購入費用が抑えられる
という点は、特に私たちのような小さな店にとっては、運営そのものに関わるパラダイムシフトとなりました。
そして、
〈お客様にとって〉
①賞味期限が2年なので買ってからゆっくり開けることができる。
②開栓後もゆるやかに変化していくので、1~2か月美味しく楽しめる
③瓶を店舗に返却できるので、ゴミを少なくすることができる
と、ご自宅で愉しんでいただくときにも、無駄なく愉しんでいただける方法となりました。
始めてみて気付いたのですが、結果的に
リユース・・・瓶の再利用
リデュース・・・豆のロスとゴミの削減
リサイクル・・・(なにがここにあたるか探しています)
と、3Rを目指せる方法でもありましたので、この保存方法を広く知って使っていっていただけるようにしたいと考え始めています。
(この思い付きについても、別途記事にしたいと思います)
ビール屋でコーヒー屋だからできること。
ビール瓶で焙煎豆を加圧熟成させる保存・販売方法は、
大切なコーヒー豆を大切にできる、今の私たちにとってベストな方法です。
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