見出し画像

コロナ禍で給付金が出たとき
普段は泊まれないホテルで贅沢して来た

海が見えるホテルの近くに、昔
レオ氏が自転車で遊びに来ていたらしい

「逆からの景色は初めて見た」
2人で窓ガラスに額をつけ
レオ氏が上機嫌で
子どもの頃のエピソードがふんだんに溢れた

レオ氏は不定期でメンタルが病むことがあり
常に夜が怖いと言い出す

実際、隣にいるレオ氏が震えていたときは
一晩中、灯りとテレビを点けて
背中をさすりながら夜を明かした

心身共に傷つけられた人は発作を起こす

「びっくりしちゃったね、怖かったね」
かける言葉が見当たらず
幼児への対応しか浮かばない

他の夜は、沈黙に包まれソファーに並んで
BGMと字幕だけの映像をぼんやり眺めた
レオ氏がわたしの肩に頭を預けて寝落ちしても
モニターだけはそのままにして、朝まで寝た

翌朝、謝るレオ氏へ
「コーヒー、冷めるよ」
毎度のセリフで
どうしたら、この人が一瞬でも苦しみから解放されるか、そんなことを考えていた

多分、わたし達は他人が想像するほど
男女が睦み合うことはしてない
どんな関係に居ても
互いの共同体にいる1人なんだろうなぁって

だからより、レオ氏から嫌なことを忘れさせたい
ゆっくり眠れる晩を与えたい
傲慢な考えが、ホテルへのお泊まりの裏にあった

ルームキーを開け、だだっ広い部屋へ広がるオーシャンビュー
海外や沖縄とは異なる
レオ氏にとって1番楽しかった時期を過ごした海
感受性が強い人の感動は、全身で嬉しいを表し
とめどなく昔話が語られていく

ここに泊まった日は、二泊とも
昼間の疲れで21時には眠り込んでいた

朝焼けは6時半ぐらいだったように記憶している
ピンク色に黄色帯びた朝の光を
ペットボトルの水を飲みながら浴びていた
小さな小さな寝息を立て、微動だにしないレオ氏

なんとなく、わたしは間違った方を引いた 
安眠するレオ氏より
わたしは何か間違っている不安が大きくなり
夕焼けにそっくりな空へ答えが欲しくなり
数年経っても、間違いが分からぬまま今日が来る

人へ親切にする意味はあるのだろうか