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Photo by
hidemaro2005
「見ないで」
道岡の嫁が叫び、懇親会の和やかさを破った。
寺田は道岡の娘を手籠めにしたのだ。
中学生の少女が懇親会の最中に。
参加者たちが少女の喚きへ駆けつけるも、光景に目を背けた。
道岡は寺田の金魚のフンとして生きてきた。
「寺田さんは良い人じゃけん。うちの子がいつまでも制服を着て家におるから、こうなった」
と、奴の悪行を覆い隠す。
町には防犯カメラもなく、真実は闇に葬られた。誰もが沈んでいく寺田と道岡に同情しなかった。
少女の未来は誰が守るのか。
寺田と道岡へ酒を飲ませ、飲酒運転の果てに起きた事故と見せかけ、沈む寺田と道岡を主婦たちは貯水池の縁で確認して解散した。
寺田の素行は日頃から悪く、親が亡くなると悪さを止める者が居なかった。
手籠めにされたのは道岡の娘に留まらず、
よそから嫁に来た女は辱めに遭い、でもそれを警察に相談するなど躊躇いがあった。