吹き抜けの空
吹き抜けのステーションビルに
灰色の空
行き交う人々はそれぞれ
母国語を持っている
近くの水族館を出た魚が
紛れ込んでいると聞いて
匂いを頼りに歩いてみるが
魚はどこにもいない
人々は快活であり
憂鬱であり
寡黙であり
饒舌だ
アイスクリームを売る女の子が
吹き抜ける風に瞬きをした
構内アナウンスは列車の名を告げ
田舎町までの道をそれとなく示す
夕暮れに映し出された
吹き抜けの空に
映像化された虎が
威嚇の牙を剥く
ああ
ここはどこなの?
と
少女が尋ねる
ここは
国際都市、オオサカ
自由を得た
魚が紛れている