ブロードウェイミュージカル『ハミルトン』を観ても春馬くんを想う
音楽とミュージカルが大好きな中3の息子が最近注目しているリン=マニュエル・ミランダ。
昨年の夏、子供たちと一緒に見に行ったブロードウェイミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』の作詞・作曲、製作を手掛けたアーティストだ。
それ以外にも『モアナと伝説の海』や『ミラベルと魔法だらけの家』などディズニー映画にも多数楽曲を提供していたり、今後実写化されるミュージカル映画『リトルマーメイド』にもかの巨匠アラン・メンケンとコラボするらしい、と、目をキラキラさせて熱く語る息子。
そのリンが脚本、作詞、作曲、おまけに主演まで務めた2016年ブロードウェイミュージカル『ハミルトン』を映像化してDisney+で配信しているというので、ある午後我が家のリビングで息子と一緒に見ることにした。
ブロードウェイミュージカル『ハミルトン』について
アメリカ建国の父とされ、その肖像画は10ドル紙幣にもなっているアレクサンダー・ハミルトンの半生を描いた歴史ミュージカルである。アメリカ建国時代が舞台でありがながら、ヒップホップやR&Bなど多種多様の現代音楽を融合した画期的なミュージカル。更に、歴史上の人物に白人ではなく敢えて有色人種を配し、それもまた画期的。
2015年2月、オフ・ブロードウェイにあるパブリック・シアターでの初演を皮切りにブロードウェイの劇場に移行し2016年には第70回トニー賞13部門16ノミネートを獲得し、その後も数々の賞を受賞している。
とにかくとにかくかっこいい!
前編後編合わせて約3時間、一瞬たりとも目を離せないほど、かっこよかった!
まず、何がかっこいいって、とにかくその楽曲とパフォーマンス。
ヒップホップあり、R&Bあり、ポップスあり、ソウルミュージックありでどれもこれも私の感性を大きく揺さぶった。メロディアスな曲では演者たちの圧倒的な歌唱力に魅了され、軽快なヒップホップではこちらまでヒートアップしてくるし、ソウルフルなR&Bでは魂に響いてくる。
議会での討論は熱いラップバトルで繰り広げられ、これはもう、アメリカの若者たちの心を鷲掴みにしたのも当然だな、と納得する。
ハミルトンの野心を表す曲「My shot」の "I'm not throwin' away my shot!"(
私は決して諦めないぞ!)というフレイズが、様々な場面の曲に織り込まれリフレインされており、そのたびにハミルトンの建国に対する野心の強さを思い知らされる。
また、歴史的革命の物語というだけでなく、ハミルトンと妻イライザ、その姉のアンジェリカの織りなすラブストーリーとしても見ごたえがある。
イライザの姉でありながらハミルトンの一番の理解者であるアンジェリカは、実はハミルトンに横恋慕しているのだが、アンジェリカの気持ちを表す曲「Satisfied」のフレイズが、こちらも様々な場面の曲に入り込みリフレインされることで、アンジェリカの想いの強さを印象付ける。
ハミルトンは、女性にモテて、そんな女性たちに翻弄されながらも支えられ愛されながら生きたこと、それがハミルトンをより一層魅力的に見せた。
更に、舞台演出もおしゃれなのである。
舞台中央に円形の台座があり、それが曲に合わせてゆっくり回ることにより演者たちの配置が少しずつ変化していくセット。
白い騎士のようないで立ちのアンサンブルが隊列をなして踊るダンスも、かっこいい。
18世紀のアメリカ建国前後のニューヨークで繰り広げられた歴史的瞬間が、21世紀の今、現代的な歌とダンスで見ているこちらへ迫ってくるのだ。
すべて見終わった後、私達の第一声は
「いや〜、カッコいい!リン=マニュエル・ミランダ天才!見て良かった!」
そして
「・・・ところで、ハミルトンって知ってた?」
だった。
本編に付属の特典映像を見て
本当に恥ずかしながら、歴史に疎い私は、10ドル紙幣にもなっているハミルトンのことをほとんど知らなかった。
本編を観た後、ハミルトンのこと、このミュージカルのことをより知りたくなって、すかさず同じくDisney+で配信されていた特典映像を見た。それは、リン=マニュエル・ミランダはじめとするメインキャスト達とこれを映像化したトーマス・ケイル監督、歴史監修を行った歴史研究家によるトーク映像だった。
リン=マニュエル・ミランダ自身、プエルトリコのルーツを持っていて、アレクサンダー・ハミルトンの伝記を読んだ時、こう直感したという。
先ほども書いたが、その人物の特徴をフレイズとメロディによってリフレインすることにより観客に印象付けるのは、ミュージカルだからこそなせる技だ。議会の討論をラップバトルに仕立てたのも絶妙だった。
そして私が特に、このトークの中で印象深かったのは、歴史的監修をした歴史研究家の言葉だ。
更にそれを受けて、トーマス監督が言った言葉。
現に、リンのもとには若者たちから様々な質問、意見が届いているという。その内容は、劇中では触れられていないことに関することも多く、観劇後彼らが独自にいろいろ調べたのだということがわかるという。このミュージカルをきっかけに、多くの人がハミルトンについて、アメリカの建国について、移民問題について、人種問題について、興味を持ち、自ら調べ、誰かと対話している。とっかかりは、魅力的なかっこいい音楽からかもしれない。まさに現代的な楽曲とパフォーマンスにより、若者がアメリカの歴史に、建国の父ハミルトンに、移民問題に、人種差別に興味を向ける。
私の息子もその一人だ。
そしてやっぱり春馬くんを想う
そして、やはりどうしても春馬くんを想ってしまう私。これはもう病気なのでご勘弁を。純粋に映画レビューのみ求めている方は、ここでご退出をお勧めする。
この『ハミルトン』を観ながら、私は春馬くん最後の主演映画『天外者』を思い出した。
というのも、このハミルトンと映画『天外者』の五代友厚が重なるところが多くあったから。
ハミルトンが盟友たちと酒を酌み交わし、理想の国を創るんだ!と夢を語る「The Story Of Tonight」のシーンは、『天外者』のすきやきのシーンに重なる。
ハミルトンが建国の野心を表す「My shot」の”I'm not throwing away my shot!(私は決して諦めない!)”というフレーズは、『天外者』の大阪商法会議所での五代友厚の演説を思い出した。
献身的に夫に遣えるハミルトンの妻エライザは、五代友厚の妻豊子に重なる。
そして、ハミルトンも五代友厚も共に50歳に届かずこの世を去る。
最後は、共に主人公の没後、彼を慕う人たちの姿。
最後の劇中歌「Who Lives, Who Dies, Who Tells Your Story?」がとりわけ私の心に迫ってきた。
誰が生きて、誰が死んで、誰が君の物語を語るのか?
この曲では、ハミルトンの親しい人たちがそれぞれ口々に彼の思い出、功績を語るのだ。
彼の妻イライザは、彼の書いたたくさんの書物をすべて読み、彼を知る人に話を聞いて回ったと歌う。そして、彼の遺志をついでアメリカ初の民間孤児院を設立したことが誇りだと、歌い上げる(ハミルトンも孤児だった)。
ハミルトンのストーリーも、五代友厚のストーリーも、これからも語り継がれる。
映画によって、ミュージカルによって、たくさんの書物によって、人から人へ、ずっと。
Who Tells Haruma's Story?
ここからは、私の勝手な妄想。
春馬くんと一緒に仕事をされてきた方で、春馬くんへの愛情をずっと強く感じている方は、いっぱいいるんだと思う。
今はまだ生々しすぎて時期ではないと思うのだけど、
いつか、もう少し、時間薬が効いてきた頃に、
その中のどなたかが
春馬くんのストーリーを作ってくださるのではないか、という妄想。
例えば、そのタイトルは『HARUMA』で、
例えば、それはミュージカルで
例えば、楽曲には、春馬くんが作った「You & I」も歌われて
春馬くんがどんな人であったか
春馬くんが何を成し遂げたか
春馬くんが何を目指そうとしていたか
そういうストーリーを作ってくださらないか、と。
でも、悲劇にはしないで欲しいのだ。
・・・でもやっぱり悲劇になっちゃうのかな。
なんて。
ブロードウェイミュージカル『ハミルトン』を観ても春馬くんを想う私。