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本当に“これならわかる“〜誰もが読むべき「コーポレートガバナンスの教科書」

私は、ある企業において、いわゆる“コーポレートガバナンス“の一翼を担う仕事をしています。この“コーポレートガバナンス“あるいは、“ガバナンス“という言葉をよく耳にすると思います。

先日の日本大学アメリカンフットボール部における薬物問題においても、“大学側のガバナンスに問題があったのではないか“などという書かれ方をします。

ビッグモーターの事件においても、こんなコメントがありました。<ガバナンス以前の問題として、取締役会も監査役会も機能しておらず、会社の体をなしていない>。

“ガバナンス“、“企業統治“とも訳されますが、こうやって書くと、私たちの生活からは遠く離れたところにあるように思えます。実は、そうではないのです。もっと身近なものなのです。だって、“ガバナンス“ができていないと、大学の卒業生や在学生は悪影響を受ける可能性があります。知らないうちに、多額の保険料を払わされているかもしれません。

松田千恵子著の「コーポレートガバナンスの教科書」の冒頭に、こんな記述があります。

“ガバナンス“に似た言葉として“ガバメント“=政治・政府というものがあります。この二つの違いとして、「ガバメント」は上意下達的であるのに対し、<「ガバナンス」は関係者が参加していろいろと協議をし、自律的な合意形成を行なっていくシステムという意味合いがあります>。

“関係者“とは誰でしょう? 一般的には、株主であり(つまり、あなたが株式投資を行なっていれば関係者です)、取締役や監査役といった会社役員であり、社長・執行役員といった経営幹部です。

しかし、それだけではありません。従業員、お金を貸している債権者、取引先、顧客、国・地域社会(同書より)、全て関係者なのです。ステイクホルダーと呼ぶこともあります、<日本語では利害関係者(経済・ビジネス用語辞典)>です。

もちろん、それぞれの立場によってやらなければいけないこと、あるいは出来ることは異なります。でも、無視することはできないのです。

ちょうど一昨日(2023年8月29日)、ジャニーズ事務所における性被害事案に関する調査報告書が公表されました。それを見ると、<第4本事案の背景>の中に、<3 ガバナンスの脆弱性>という項目があり、<取締役会の機能不全>や、<内部監査部門の不存在>、<内部通報制度の不十分さ>といった、いわゆる“コーポレートガバナンス“機能の問題が挙げられています。

次の項目が、<4 マスメディアの沈黙>が記載されています。<マスメディアからの批判を受けることがないことから、〜(中略)〜自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない>と厳しく指摘しています。

つまり、上記の“関係者“である“従業員(タレント)“や“社会(ファンなど)“を守るための重要な役割を担うマスメディア(彼らも“関係者“の一人です)にも、ガバナンスを脆弱にした責任がありますよと言っていいるのです。


「なるほど、“コーポレートガバナンス“について少しは知っておかないと」と思った方にとって、副題に“これならわかる“と付いた「コーポレートガバナンスの教科書」は最適の本です。

松田氏は、<専門的あるいは学術的な知識や知見が得たいという方にはあまりお勧めしません>と書いています。(私は、そんなことはないと思いますが)そして、本書でこだわることとして、3点挙げています。

<1.難しいことは言わない 2.きれいごとは言わない 3.重箱の隅はつつかない>

特に、企業で働く方、投資をしている方には、是非とも読んで欲しい一冊です。より良い社会を創るためにも


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