広島でパリを感じる〜ひろしま美術館の素晴らしいコレクション
広島出張。仕事を終えた翌朝、帰京前にひろしま美術館に寄りました。
朝起きると、ホテルの窓から眼下にひろしま美術館、背後に広島城。さらに、左手には今年開場したスタジアム、エディオンピースウイング広島。素晴らしい景色です。
ひろしま美術館は広島銀行が中心になって設立したようですが、円形の建物がユニーク。ホテルをチェックアウトして10時前に入館、すでに屋外は炎天下でした。それでも、美術館に入ると静謐な空気と涼しさが癒してくれます。
この美術館、素晴らしいです。西洋画のコレクションは日本人にとっては最も身近な印象派以降が中心です。ふと思ったのですが、“身近“である理由の一つは、多くの画家が浮世絵の影響を受けたこともあるのでは。
館内も円形のレイアウト、中心のガラスの天井から青い空が見え、ロダンの彫刻などが展示されています。その中心から放射線状に並ぶ展示室を回遊する構造となっています。
館内では、スマホ等を活用して見られる画家・作品解説もよくできています。マネの「バラ色のくつ(ベルト・モリゾ)」という作品があります。モリゾは自身も画家、マネの弟ウジェールと結婚します。マネはモリゾを何度かモデルにしていますが、この作品はスペインのゴヤの影響があるとの解説です。
同じ部屋にある、モネの「セーヌ河の朝」もいいですね。パリ五輪ではセーヌ川が開会式の会場となりましたが、この絵はパリから離れ、モネが住んだジベルニーを流れるセーヌです。
ルノワールの珍しい風景画「パリ・トリニテ広場」、ピサロが描く「ポン・ヌフ」。オリンピック観戦でパリを訪問することはできませんが、絵の中にパリが感じられます。“ポン・ヌフ“は“新しい橋“という意味ですが、現在のパリでは最も古い橋。シニャックの「ポン・ヌフ」も展示され、この比較も楽しいものがあります。
ゴッホは、最晩年の傑作「ドービニーの館」。建物と前景のなんとも言えない一体感と、匂うような生命力が凄いです。
ロートレックがポスター制作の為に描いた作品、黒い帽子・マント、赤いスカーフの男。並んで展示されたキャバレーには、自身の姿も描かれています。
フォービズムの‘画家、アルベール・マルケの「ポン・ヌフとサマリテーヌ」。サマリテーヌは橋のたもとにあるデパート、マルケの絵は1940年のもので、今の風景と言えます。
フォービズムと言えばマティスですが、「ラ・フランス」でトリコロールを身にまとった女性を見ることができます。
ピカソのコレクションも面白い。ドガの影響を感じる「カンカン」、青の時代「酒場の二人の女」、ピカソが最後まで手元においた「仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳」(1923年)、ぐっと時代が経過し「女の半身像」と、ピカソの多彩性を垣間見ることができます。
エコール・ド・パリの画家も並びます。モンマルトルなどパリの街並みを描いたユトリロの作品はパリの「モンモランシーの通り」。ローランサン、モディリアニとも会うことができます。
そしてシャガール、「河のほとり」は彼のオールスターが出演しています。回廊側に展示された「私のおばあちゃん」という小品も味があります。
日本画のコレクションも素晴らしいようですが、今は展示されていませんでした。残念ですが、またチャンスはあるでしょう。
ひろしま美術館、見逃す手はないですよ
なお、本日(8月6日)で、広島に原爆が投下されてから79年になる
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