手の中の音楽36〜マレイ・ペライアのJ.S.バッハ「ピアノ協奏曲」
暑ーい夏の午後、BGMに選んだのはバッハのピアノ協奏曲でした。
バッハの時代ですから、元々はハープシコード用に作られた作品、1台用、2台用など何曲か作曲していますが、私が愛聴するのはマレイ・ペライアとアカデミー・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズが2000年から01年にかけて録音し、ソニークラシカルからリリースした2枚のアルバムです。
ハープシコードをピアノに替えて、1番から7番までが収録されています。1730年代後半から40年代にかけて作られたと考えられる作品群です。
最初に発売されたのは、第1番・第2番・第4番が収録されたアルバム、続いて第3番・第5番・第6番・第7番が入った1枚が発売されました。夏の日のお勧めはオリジナルCDでいうところの2枚目からスタートです。(Apple Musicはこちら)
ペライアが演奏した7曲中、2・4・3・6番が長調、1・5・7番が短調。第1番の第1楽章はニ短調で、ドラマチックな名曲ですが、いきなり聴くにはちょっと重い。
その点、第3番ニ長調のオープニングは、気持ちを爽やかにさせてくれます。スローで思索にふけさせてくれる第2楽章、暑さを吹き飛ばすように流れていく流麗な第3楽章という構成。バッハの世界に導かれること間違いなしです。
気分が高揚したところで、続いて始まる第5番ヘ短調で少し落ち着きを取り戻すことができます。そして、この第2楽章は私の大好きなパートです。
ウディ・アレン監督の「ハンナとその姉妹」(1986年)、彼のベスト映画の一つだと思いますが、この中でこの第2楽章が極めて効果的に使われます。公開当時、私のクラシック音楽に対する知識は微々たるものでしたが、グスタフ・レオンハルトがハープシコードで奏でるこの音楽に感動を覚え、その曲が何か探しあてました。あれが、バッハの「ハープシコード/ピアノ協奏曲」との出会いでした。その記憶もあることから、第5番の第2楽章は私にとって大切な音楽です。
第6番はヘ長調、チャーミングな第1楽章。第7番ト短調、なにか記憶を呼び覚ましてくれるような素晴らしい旋律。
この流れが心地よく、ながらの各種作業がなんだかはかどっているような気分にさせてくれます。バッハのこの耳ざわりの良さってなんでしょう、このピアノ協奏曲たちを聴くと、特にそう思わせられます。
そうしてから、第1番ニ短調を聴くと、ちょっと背筋が伸びで気持ちが良いです。なお、配信バージョンの曲順は、CDを踏まえて上記の順、つまり1・2・4/3・5・6・7番になっています。
暑い夏の午後、バッハの名曲で癒されるのも悪くないですよ