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五つ星出ました!〜アガサ・クリスティー著「葬儀を終えて」

「予告殺人」に続いて、もう一作くらいアガサ・クリスティーを読もうと考えていたら、Amazon Audible「葬儀を終えて」(1953年 ハヤカワ・クリスティー文庫)という作品を発見した。読んだことはない、ないはずだ。一応調べてみたが、痕跡は残されていない。

例によって、予備知識は入れずに始めてみた。

“葬儀“というのは、ヴィクトリア時代に建てられた屋敷“エンダビー・ホール“の館主、リチャード・アバネシーのものである。リチャードは、医者にはかかっていたものの、死は唐突に訪れた。息子はすでに亡くなっており、当主の座を誰に譲るのか、そして遺産を相続するのは誰か。

リチャードには三人の弟、三人の妹がいるが、生きているのは弟ティモシーと、妹コーラのみ。ただし、他界した兄弟には配偶者や子供がいる。葬儀に参列したのは;

次男の妻、ヘレン
長女の息子、ジョージ
弟ティモシーの妻、モード
三男の娘、スーザンとその夫
次女の娘、ロザムンドとその夫
三女コーラ

遺言執行人のエントウィッスルが、遺産分配について説明する。その配分に、特段不自然なところはないのだが、コーラが一言発する。「だって、リチャードは殺されたんでしょう」

そして、ローラは………

弁護士エントウィッスルは独自に調査をする。殺人事件には、警察が当然出動する。エルキュール・ポワロは……なかなか登場しない。

「葬儀を終えて」、結構好きだった。ミステリーとしての面白さは当然として、クリスティー作品から醸し出される英国人かたぎが、垣間見られる。

例えば、小説の冒頭のシーン。老執事のランズコムが古くなってバネが弱った日除けを見て、独白する。<こういう古いものはいまや修繕もしてもらえない。時代遅れですからね、と修理屋は首を振ってさも見下したように言う。古いもののほうが新しいものよりずっと上等なのに。ばかばかしい!>(「葬儀を終えて」より)

読後調べると、ポワロものの長編33作中の25作目。かなり後期の作品である。本作の中のポワロはセミリタイアという感じで、あまり動かない。その分、弁護士エントウィッスルや警察が生き生きと描かれている。その点も、私の好みである。

これ以上は詳しく書けないが、私としては高評価。いつのもように、霜月蒼の「アガサ・クリスティー完全攻略」(クリスティー文庫)を見た。

出ました! 最高点の五つ星。“未読は許さん。走って買ってこい。“です。

霜月蒼の短評は、<巧い。見事だ。> (「アガサ・クリスティー完全攻略」より、以下同)そして、前述のコーラの台詞については、<本格ミステリの名台詞ベスト1にしたっていいんじゃないかと思う>と書いている。

なお、1982年に日本クリスティ・ファンクラブが実施した投票では第9位。

さぁ、“走って買ってこい“!


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