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別冊「ブックリコメンド」LECT蔦屋書店・江藤宏樹編(2020.10.9&16)

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ここで出ました「ブックリコメンド」。今回は広島LECT内にある蔦屋書店から江藤宏樹さんのご登場です。

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江藤さんは個人的に知識量&活動量ともに広島で五指に入る書店員さんだと思ってます。アツい棚の構築もさることながら、数々のフェア、トークイベントの開催、月イチで読書会もやってるし、さらにこんな企画まで!

とにかく本への愛情(偏愛)と行動力がハンパない。なんてったって江藤さん、「文学コンシェルジュ」ですから!

蔦屋書店では「これができたら何点」というのがあって、それがある点数になるとコンシェルジュを名乗れるんです。広島には僕以外に旅のコンシェルジュ、暮らし・実用部門のコンシェルジュ、児童書のコンシェルジュなどがいます。これをはじめたのは蔦屋書店1号店の代官山店ですけど、代官山店は店員全員がコンシェルジュで、すごい人ばかり集めてオープンしたんです

さすが書店界に革命を起こした蔦屋書店の代官山店。オープンが2011年だから、もう10年経つんですね。ちなみにコンシェルジュがよく聞かれるのは、「子供に本を読ませたいけど、どんな本を勧めていいのかわからない」というお母さんからの質問。そういうときってどう答えるんですか?

僕が勧めやすいと思ってるのは宮部みゆきさん。宮部さんはゲーム好きで、『ブレイブ・ストーリー』っていうゲームの原作小説も書かれてて。だから「子供がゲームばかりやってて本を読まない」という人にはそういう入口から本に入ってもらって。そしたら宮部さんはミステリーから時代小説まで幅広いので、いろんな本に進んでいけると思うんです

なるほどねぇ。あまりに話が面白いので、ここで江藤さん自身のことについて聞いてみました。

母が本が好きだったので、子供の頃から本は読んでて。当時は高木彬光や江戸川乱歩ら、主にミステリーを読んでましたね。大学を卒業した後は家具屋に就職して、20代はタンスを売ってました。本は好きだったけど、書店を受けても落ちてしまって。ただ、転職を考えたとき「やっぱり好きな本を扱う仕事に就きたい!」と思い、本屋に入って今が2社目になります

では、そんな文学コンシェルジュが本日推薦する3冊とは?

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まず一冊目はコチラ。

これは中国のミステリーですけど、最近は「華文ミステリー」ってちょっと流行ってるんです。中国のSF小説の『三体』もすごく売れて。中国は人が多いからすごい才能がいっぱいいるんでしょうね。これは題名通り、犯人が誰を殺人するか予告してくるんです。その手法って普通にやると荒唐無稽になりがちだけど、この小説はそれを見事にやってのけて、さらにその連続殺人にもちゃんと理由があるんです。ムダなことが何も書いてないし、全部のヒントがきれいに回収されていく気持ちよさがあります

2冊目は中国に続いて韓国。あ、この本の帯に江藤さん寄稿してます。

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これは韓国の純文学。男性のホームレスが主人公なんですけど、彼はまだ若いんで人生やり直そうと思えばやり直せる年齢なんです。その彼が女性のホームレスと出逢い、彼女にだまされて有り金とか荷物を全部とられてしまって、そこから憎しみを持って彼女に接するけど、再会後はだんだん愛し合うようになって……でも読んでてまったく救いがないんです(笑)。ただ、救いはないけど、この本を読んだ後って、何て表現していいかわらかないヘンな気持ちが渦巻くんです。「その気持ちを表すには、この小説を書かなければいけなかったんだろうな」っていう。そこで感じるヘンな気持ちを味わうことが文学を読む意味なんだろうと思います

「そこには何もないのだが、そこには人間のすべてがある。」。このコメントが江藤さんの想いなのでしょう。そして3冊目は日本の小説。

これは石川宗生さんの2冊目。1作目の短編集『半分世界』も面白かったのでみんなに勧めたんです。ジャンル的にはSFで、その中に『吉田同名』って話があって、吉田さんが会社から家に帰るまでに19,000人くらいに増えるんです。ただ19,000人いるから家に入れなくて、そうこうしてるうちにもっと増えて、「これは吉田を隔離しよう」ということになって……さあ、どうなるっていう(笑)。そんな石川さんの長編なのでどうなるかと思ったら、1編4~5ページの短い話が大量に入ってて、全体としてひとつの長編という体になってました

本の最前線にいる江藤さんに、ずっと訊きたかったことを訊いてみました。ずばり「この先、本は生き残っていけるのでしょうか?」。

形は変わるかもしれませんけど、本は絶対なくならないと思います。僕は電子書籍否定派ではなくて、自分でも使ってるけど、やっぱり紙の本のよさってあると思うんです。僕は本はモノとしても好きで、電源も必要なければ、パッて開いたときの「見開き」の感覚とか、「あそこどうなってたっけ?」ってだいたいの感覚で戻れるところとか、そういう便利さはこの先も必要とされると思います

では最後に、書店員として書籍に対する愛情をひとつ。

本は想像力を豊かにしてくれると思うんです。で、想像力って何かと言うと、他者を思い遣る気持ちで。想像力が欠けちゃうと立場の違う人の気持ちがわからなかったり、他人に寄り添うことができなくなると思うんです。だから本を読んでいろんな人のいろんな人生を感じることで、自分じゃない誰かを思い遣れるようになるんじゃないでしょうか?

こんな心強いコンシェルジュがいる街は、きっといい街に違いない。江藤さん、これからも広島のブックシーンを共に盛り上げていきましょう!

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2020.9.15@HFM

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