燃ゆる女たちの美学〜『ピアノ・レッスン』(1993)、『燃ゆる女の肖像』(2019)二本立て
6月16日(水)、どうやら梅雨入り。午前中、新宿で用事を済ませ、午後が空いたので、高田馬場の老舗映画館『早稲田松竹』で二本立てを鑑賞した。
2作品いっぺんは、相当余力がないと無理。また、そもそも、こういう興行をやっている劇場が今どき珍しい。最後のダブルヘッダー、いつだったか全く記憶にない。
でも、シニアは900円だから、かなり得した気分になれた。
今日は、ラインナップもよかったのだ。
1本目は、ジェーン・カンピオン監督『ピアノ・レッスン』。30年近く前の映像で、修復もあるのだろう。ブルーレイ上映とのことだがフイルム・ライク、ニュープリントとしか思えなかった。これは、レーザーディスクを持っていたので、繰り返し見たはず。ただ、盤を手放して10年くらい経つせいか、細部はおろかストーリーも、ほとんど覚えていない。ホリー・ハンター、ハーベイ・カイテル、サム・ニールの好演が光る。19世紀の移民の時代だろう。ニュージーランドを舞台にマオリ族を登場させたところが、公開時は新しかった。ハーベイ・カイテルが、西洋人と現地人との狭間で微妙な立ち位置にあることも見どころ。マイケル・ナイマンの音楽が有名である。ホリー・ハンターが、激情に走る女性を演じ切り、もはや名作と言ってよい。
2本目は、セリーヌ・シアマ監督『燃ゆる女の肖像』(2019)。この監督は知らなかった。カンヌ映画祭の二冠作品。美しい映像が際立つ。『ピアノ〜』同様、監督は女性で、男性は、記憶の限りでは一人しか出てこない。しきたりや規律に苦しめられる女性たちを描くのも、『ピアノ〜』に同じ。時代は18世紀。
『ピアノ〜』と比べると、『燃ゆる〜』の方はやはり新感覚の映像。女優さんたちが個性的。画像は恐ろしくシャープに感じた。物語の設定は、ロマン・ポランスキー監督の2010年の作品、『ゴーストライター』に似ているなと。女性同士の恋愛を描く映画は、あまり馴染みがないのだが、これは深みを感じて好ましかった。時代背景を意識しての映画作りだろう、二人の女性の毅然とした生き様に美学を感じさせた。
コロナに梅雨入り、映画鑑賞はまだまだ自宅メインが続きそうだ。欧米の映画が続いてるので、目先を変えて、香港や台湾のDVDやブルーレイでも少しずつ見直していこう。