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【ココロコラム】うつに効く食べ物
マスコミが取り上げすぎたせいか、心の不調を訴えて精神科に来る方は年々増える一方です。自分からはっきり、うつと言ってくる方も少なくありません。その中には、だれがどう見ても本物のうつ病の方から、まったくうつではない方まで様々ですが、多かれ少なかれ憂うつな気分が存在することは確かです。
精神科医はうつに対しては抗うつ薬を処方します。しかし、困ったことに、抗うつ薬は重度のうつ病にはよく効くのに対して、軽いうつ状態には必ずしも劇的に効くとは限りません。そこをうまく効くように出すのが精神科医の腕の見せ所だと思っていますが、最近はマスコミで「抗うつ薬は効かない」というような、やや偏向した報道をしますし、「精神科の裏側」のような本も多数出ており、抗うつ薬が安易に出されすぎていることもあって、薬を飲みたがらない方が多数いらっしゃるのも確かです。
では、薬以外の治療法はないのかとなると、精神療法やカウンセリングはもちろんでしょうが、それ以前の基本は生活指導ということになります。まずは睡眠をきちんととる。夜12時以降に寝ている人は、必ずそれ以前に寝るようにしてもらいます。特に、寝る1時間前までにテレビや携帯など、画面を見るのをやめるのがポイントです。
これだけでかなり効果がありますが、さらなる介入として食事を考えます。うつのモデルを簡単に説明すると、脳内のセロトニン不足ということになりますが、セロトニンや、その原料のトリプトファンを食事でとろうという方向は間違いです。というのも、これらの栄養素は、現代の日本人が普通に食事をしていれば、まず不足することはありえないからです。
では、うつを防止するには何を食べればいいのか。現在ある程度論文レベルで有効性が示され、注目されているのはオメガ3脂肪酸です。DHAやEPAといった名前のほうが有名かもしれません。青魚の油や、一部の植物油に含まれている成分です。植物油の食品の中では、くるみがお手軽です。これらは、うつ状態を改善させるある一定の効果が認められています。一昔前処方されていた薬より有効性が高いというデータもあるぐらいです。精神状態を改善する具体的な食べ物として、青魚とくるみは推奨できると思います。意識して食べないと、なかなか口にする機会もないでしょう。ちょっと食べる量を増やす工夫をする価値はあると思います。
やや信頼性は下がりますが、葉酸も注目度が上がっています。葉酸をきちんと摂っていたほうがうつの発症度を下げるというデータがぼつぼつ出始めています。葉酸はレバーなどに多く含まれていますが、文字通り緑黄色野菜にたくさん入っているので、緑黄色野菜をたっぷり食べるのがうつの予防になるのではないかと考えます。
緑黄色野菜は、葉酸が仮にうつと関係なかったとしても、食べておきたい食品ではあります。というのも、精神科に来る方はけっこうな割合で便秘に悩んでおり、それがイライラ感など、精神状態を悪くしているからです。食物繊維をたくさん摂っておくことは、便秘を防ぎ、悪い結果にはなりません。
ちなみに、サプリメントで微量栄養素を補おうというのはあまり感心しません。医者にかかればビタミン剤などは出してもらえますし、そもそも過剰なビタミンは全て尿から出てしまいます。栄養はあくまで自然な食事としてとりたいものです。
うつに効く食べ物とは、ふだん不足しがちなもの。食べすぎて体を壊した人を聞いたことがないようなものと考えておくと、間違いが少ないかもしれません。だからこそ、意識して食べておきたいものです。
(精神科医・西村鋭介)
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