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鳩サブレの缶から出てきたものは。【ゴミ屋敷からのSOS】#7

新しい命と出会い、姉にSOSを出して、ゴミの片付けはまずまず順調に進んでいた。いつしか、得体の知れない虫に出会うことにも慣れて。




ゴミ屋敷の片づけをしていて、気づいたことがあった。それは、ゴミと同じくらいお金が出てくるということ。お金といっても小銭だが、贈答用の菓子箱、梅干しが入っていた壺、コーヒーの空きビンやらに、小銭が満タンに入っているのだ。


持ち上げるのに困るくらいの重量になった鳩サブレの黄色い缶。5000円くらいの贈答用のサイズだろうか。そこにはびっしりと50円玉が入っていた。決して500円玉が混ざっていたりはしない。全てが50円玉。父の几帳面な性格を物語っている。

ゴミを捨てる、小銭の入ったビンと遭遇する。ゴミを捨てる、小銭を拾う。ゴミを捨てる、小銭の入った缶と遭遇する。

そうこうするうちに、ついにわたしは絨毯に辿り着いた。久しぶりに見る実家の絨毯は、ピンクと言うかベージュと言うか、何とも言えない色をしていた。とにかく、久しぶりの床との対面だった。そして、その絨毯の下からもビンや壺からこぼれ落ちた小銭が、ぽろぽろと出てくるのだった。


相変わらずトイレは使えなかった。だから、わたしはトイレに入るために、回転すし店に行く。父が遺した小銭を握りしめて。

──父よ、遺すなら大きいお金にしてくれ。
小銭を両替するのは手数料がかかるのだ。

心の中でそう叫びながら、回転すし店の自動精算機に小銭を流し込んだ。

編集後記:回転すし店でのトイレ兼ランチ。毎日がお寿司なんて、今となっては贅沢な日々だったなぁと思います😁


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