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周りにヤングケアラー(若年介護者)はいませんか?

わたしの学生時代の友人でMちゃんという女の子がいた。一緒に電車に乗って通学を共にする友人の一人だ。彼女はどこか影があった。どちらかと言うと騒がしいタイプのわたしには、Mちゃんは”大人しい子”という印象だった。

大人になり、そのMちゃんについて他の友人からこんな話を聞いた。




友人:「Mちゃんって、いつもかわいそうだったよね」

わたし:「何が?」

友人:「だってご飯作ってもらえないから、お弁当自分で作ってきてたじゃん」

わたし:「そうだっけ?」

友人:「そうだよ、コンビニで買ったものをお弁当箱に詰めるんだって。それをみんなに見られたくないから、隠しながら食べてたじゃん」

わたし:「…(記憶なし)」


わたしはとんだマヌケである。
一緒にお弁当を食べていた光景や通学の風景の中に、ぼんやりと浮かんでくるMちゃんの顔。他の友人はみんな笑顔だが、Mちゃんは笑っていない。影がある。
その影を、わたしは”大人しい子”の一言で片付けていた。かたや、友人は鋭い観察眼で、Mちゃんの家庭の異常性に気づいていたというのに。おそらくはネグレクト…つまり育児放棄の状態だったのではないかと、今は思う。


それで、今日は何を言いたいかと言うと、子供の目線では家庭内の問題に気づくのは難しいということ。家庭内の問題について考えたきっかけは、ヤングケアラーという言葉をよく耳にするようになったから。最近まで介護が身近にあっただけに、ヤングケアラーについてとても気になっていた。

ヤングケアラーとは、通学や仕事のかたわら、障害や病気のある親や祖父母、年下のきょうだいなどの介護や世話をしている18歳未満の子どもを指す。

ja.wikipedia.org/wiki/ヤングケアラー


冒頭に書いたようなネグレクトの異常性と家庭内の介護の問題は違う。しかし、以下のような記事を目にすると、介護者が大人である場合に比べて、ヤングケアラー(介護者が若者:記事では小学生を対象としている)の場合は特異性を感じずにはいられない。

「家族の世話をしている」と回答した小学生は6.5%。(省略)
父母の世話をしながらも父母が世話を必要とする理由について「わからない」との回答が3割程度あること、平日1日あたり7時間以上世話を行っていても、その3割超が「特に大変さは感じていない」と回答していること等から、小学生の年齢だと、家族の置かれた状況を十分に理解できていなかったり、家族の世話をすることが当たり前になり、その大変さを十分に自覚できていなかったりする可能性がある

日本総研「ヤングケアラーの実態に対する調査

上記はヤングケアラーである小学生本人を対象とした「家族の世話をしているか?」というアンケート調査についての回答だ。

ヤングケアラーである小学生自身が、介護する理由についてわからない状態であり、1日に7時間という時間を介護に費やしても、大変さを感じていないと答えているという。

わたしが今回ネグレクトを例として挙げ、ヤングケアラーの問題について書いたのは、どちらも”子供の目線では気づきにくい”という共通点があるからだ。つまり、周りにいる人間、大人でも友人でも行政でも、誰か手を差し伸べてあげられる人が必要なんじゃないか…と考えたわけだ。

事実、小学生本人に学校や大人にしてもらいたいことを尋ねた回答は

「自由に使える時間がほしい」(15.2%)、「勉強を教えてほしい」(13.3%)、「自分のことについて話を聞いてほしい」(11.9%)

となっている。そして、引用させてもらった日本総研の記事では、こう締めくくられている。

周囲の気づきを適切に支援につなげていくために、活用しやすい支援制度と相談体制の整備が求められる。

話は学生時代の友人Mちゃんに戻る。大人になった今なら、Mちゃんの影に見え隠れする家庭の状況が、ネグレクトやヤングケアラーなのではないかと推察できる。
もし、わたしがMちゃんの周りにいる大人なら、「食事はどうしているの?」「家でご飯は食べているの?」ときっと声を掛けるだろう。お節介と言われようと、きっとそうする。

編集後記:大人になったMちゃんは、やはり影がありました。色々あったんだろうな…と思わせるような影です。そして、わたし自身が子供を持つようになり、当時わずか10代前半だったMちゃんの状況に気づいてあげられなかったことが、とても心苦しく感じられます。今回の記事が、周りに同じような若者がいないか、いるとしたら何ができるか考えるきっかけになれば良いなと思います。


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