マーケターではなくLoverを雇え|前編(準備と試行錯誤編)
SNSマーケティング、インフルエンサーと連携したマーケティングなど、マーケティングあり方は刻一刻と変化を続けています。誰でも発信者になることができ、いわゆる「バズ」によって、瞬く間に情報が広がることも少なくありません。
そんな中、いわゆる" SNSウケする" 発信方法が、自社のイメージとはイマイチマッチしない・自社魅力を伝えたいのだけど、ブランドイメージを壊したくない。そんな悩みを持つ方も多いと思います。
まさに、私もその一人でした。
・自社のブランドにとって最適なマーケティング施策をどう選択すべきか
・来てほしい顧客と、どう出会うべきか
この記事では、本業で戦略コンサルタントをしている私が、中小企業のマーケティング部門で、1年間、手を動かし・分析し・挫折に発見を繰りかしながら見つけた糸口をご紹介します。
(前提)
主にtoC向けの住宅を中心とした一級建築士事務所での話です。従業員規模でいうと30名といったところでしょうか。マーケティング担当者は1名で営業部隊はなし。独自の価値観のもと、お客様一人一人に合った住宅を完全自由設計(※)で提供しています。
(※)カタチの決まった住宅ではなくイチから一人一人異なる住宅の設計を手掛けるあり方。
1年間、取り組んだ施策と試行錯誤の記録。そこから見えた結論。
マーケティングって、大きく分けて「準備」「実施(検証)」の2つプロセスが大きな肝になってきます。前編では、具体的にどんな準備をしたのか。後編では、実施する中で見えたことをまとめています。結論だけ知りたい方は後編からお読みいただいても!
■準備段階
ありがたいことに、マーケティングの「準備段階」に関するノウハウは、世の中にたくさんある。ここでは、いわゆる" 王道" の内容だけでなく、具体的なスクリーンショットを含めて、準備段階に必要な観点をまとめている。
準備段階①|現状の分析をする
準備段階②|今後の計画を立てる
準備段階①|現状の分析をする
1|まずは、自社を理解しよう。現状と理想像からそのGapを把握する。
・現在、どんな方法で集客しているか?
・実際、どの経路からのお客様が多いか?
・集客における理想は?
・マーケティングを推進する責任者の対応範囲と割ける(割いている)時間は?…など、現在の取り組みを明らかにすることが最初のステップです。
2|次に、他者を分析しよう。あなたが思う"成功事例"は何でしょうか?
今回のマーケティングで大事な観点。それは、バズる・流行りのマーケティングではなく、自社のブランドにとって、理想的なマーケティングを実施するということ。ブランドが持つ印象や、優美さ、細かくも大事な要素を落とさずに発信してゆく…
第2ステップでは、他者のSNS投稿やBlogでの発信、オフラインのイベントなど、施策を立てるに当たって参考にしたい事例を見つけます。加えて、競合が何にどの程度広告費をかけていそうかをざっくりと把握までできるとなおよし。
3|顧客の理解を深めよう。
そして、最も重要と言っても過言ではないのが、ペルソナの理解。
(※ペルソナ=自社ブランドが商品を届けたい相手)
ブランドの価値に共感し、購入してくれる人がどんな人なのか、どんな生い立ちで、どんな生活をしており、どんな価値観を持った人なのか…できるだけ詳しく解像度を上げてゆきます。ペルソナの理解を深めるために、すでに関わりのある顧客の中で、最も"理想の顧客像"に近い人を分析してみるのも有効です。
これまで挙げた3つの観点は、一見すると、有名な3C分析のようにも見えるかもしれない。ただ、市場の未来予想や競合優位性の確認に触れていないのは、<市場をハックしたい!><イノベーションを作りたい>という目的ではなく、<自社ブランドの欲しい顧客が、常に○件埋まっている状態を作る>という目標を達成するためのものだから。世の中にたくさんのハウツーが溢れているからこそ、どんな目的で3C分析をするかに立ち返ることも大事。
準備段階②|今後の計画を立てる
さて、現状分析によって現在の立ち位置と、理想とのGapが導けたら、次は施策の洗い出しと優先度決めをしましょう。案外、社内でも意見が割れるのがこの優先度決めの段階。
結論、
・顧客獲得プロセスのカスタマージャーニーを意識しながら施策を洗い出す。そして、それぞれの施策の作業コスト、施策の目的(KPI)の観点から優先順位を立ててゆきます。
後編で詳しく紹介しますが、施策の性質を「ストック型(質が大事)」「フロー型(鮮度が大事)」の2つの観点で捉えると、優先度がつけやすくなります。
ここまでが、「準備」のプロセス。
先に、マーケティングでは「準備」が大事、ということを述べましたが、ここでひと段落となるのは本末転倒。とっても当たり前ですが、【実行する】というプロセスが一番苦戦し、面白いところでもあります。
まずは、「実行」フェーズに遭遇した障壁から見てみましょう。
■実施・効果検証段階|遭遇するであろう障壁3選
マーケティング計画の破綻。うまくいかないのは組織的な問題!?
しっかり準備をし、施策の計画を立てた矢先。まず遭遇するのがこの障壁なのではないか。マーケティングの専門部門を設けておらず、時にバックオフィスのメンバーが、時に現場で働くメンバーが、兼務として任されることが多いように思う。慣れない施策や、コンテンツ制作を目の当たりに、なかなか時間が取れなくなることも多々…。継続を前提で計画した施策も、継続の効果検証に支障が出るなんてことも往々にしてあり得ると思います。
ちゃんと準備し、計画を立てたのにうまくいかない…。原因は案外、足元にあるかもしれません。
効果が出ていない?時間差の罠にハマるな
次に遭遇するのが、心理的な障壁。マーケティングのお仕事は、アウトプットが常に求められ、効果検証を繰り返し、結果としての数字と向き合う日々…マーケティングを担当したことがある人はきっとわかる。そう、マーケティングは、とっても忍耐力が必要なお仕事。揺るがない信念を持って、継続、向き合う必要がある。
ここで意識すべきは、マーケティングの効果は一次関数的なグラフを描く訳でも、二次曲線的に成長する訳でもない。伸びて・止まって・伸びて・止まって(※)…を繰り返すような、そんなグラフを描くということです。
(※)このようなグラフ、特に"止まる"部分のことをプラトーと呼んだりします。
必要以上のこだわりは時に障壁になる。ゴールを何と定義するか、常に意識しよう
必要以上のこだわりこそが障壁になる。これが、3つ目の障壁。おそらくマーケティングに限らず、さまざまな場面で発生する障壁でしょう。
よく知っているし、愛着があるからこそ、完璧を目指してなかなか着手できない…コンテンツにこだわりすぎて期限を大幅にオーバーしてしまう…。もしくは、承認者のこだわり故、なかなか世の中に発信するためのGOサインが出ない。
そんな時は是非、施策の目的(この施策は質が大事なのか、もしくは鮮度が大事なのか…)一度立ち止まり、目的を満たすための制作時間コントロールが重要になってくる。
1年間の試行錯誤
さて、前編でまとめたマーケティング推進で遭遇した障壁。
それが、
(1)担当者のマーケティング業務、兼任問題。
気づけば、施策推進において、遅延が当たり前に。
(2)施策推進に必要なのは忍耐力。
モチベーションを数字に持っていかれないように。
(3)必要以上のこだわりは時に障壁になる。
目的に沿ったクオリティ担保を、常に意識しよう。
アウトプットが常に求められ、毎日効果検証の繰り返し、シビアな数字と向き合う日々…マーケティングを担当したことがある人はきっとわかる。マーケティングは、とっても忍耐力が必要なお仕事。揺るがない信念を持って、継続、向き合う必要がある。
そんなマーケティングのお仕事に1年間向き合ってみて、たった3つ、大事なことを選ぶとしたら…?
■マーケティングを推進する上で大事なこととは?
世の中のマーケティングに関する書籍を見渡してみると、もっとも肝心な「実行」フェーズについて詳しく書かれているものが見当たらないように思う。だからこそ、1年間、手を動かし・分析し・挫折に発見を繰りかしながら見つけた糸口、それが、このnoteを読んでくださっている人の一助になれていればこの上ない喜びです。
マーケティングの「実行」において、大事なこと。そして、タイトルにあるように、それはおそらく自社ブランドLoverの存在であるということ。後編では、そんなことをまとめています。