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【読書記録】岡本真帆さんの『あかるい花束』を読んで考えたこと
新聞の日曜朝刊に載っている短歌コーナーを読むのが、私は好きです。
その程度の軽い「短歌好き」なので、ときどき思い出したように歌集に手が伸びます。
岡本真帆さんの『あかるい花束』は、タイトルどおりのあかるいカバーで、サイズもコンパクトなかわいい歌集で、手になじむというか、ほっとするというか、不思議な魅力のある歌集だと思います。
ふつうの言葉で語られる世界
詩歌集を読んでいると、難解な表現に出会うことがしばしばあります。
でも、この歌集に収められている短歌たちは、どちらかというと、ふつうの言葉で世界を紡いでくれています。
だから、素人でも共感しやすい、というか。
どんどん読み進めることもできるから、うっかりすると読み飛ばしてしまいそうになる。それで、二度三度とページをめくるたびに「こんな短歌があったんじゃん!」と、気づくこともある。
それが日常みたいで嬉しい。
犬
岡本真帆さんの歌集を初めて読んだんですが、この方の世界で「犬」というのは、速さや距離に感情を乗せるキーワードなのかな、と、ちょっと思いました。
半袖が着れてうれしいそれだけでどんな犬より遠くまでゆく
どんなひと、どんな犬より速くゆく 水上バスは光の類語
「犬」の使い方が面白いなあ、と思ったので印象に残っているんですが、躍動感ある短歌もたくさん書かれているので、読んでるこっちも、なんか体が浮き立つというか、嬉しい。
ダメなところも肯定してくれる
この歌集を読んでいて、おっ! と思った短歌をノートに書き留めていたんですが、振り返ると「人の心の不安をすくって肯定してくれてる短歌」をメモしてました(苦笑)
どの道を選んでいても不安という悪魔にあうの?なんだ、よかった
乱丁のある文庫本抱きしめる 愛すよたったひとつの傷を
本当に正しかったかわからない決断たちよ おいで、雪解け
なんだかね。
等身大の人間を、悩んだり失敗したり躓いたりしてる人間を、そのまま祝福してくれてるみたいで、ほっとするというか。
しゅくふくとはじける泡が光ってる 祝福 きみにはじめましてを
この短歌は、お誕生の祝福でしょうけど。
生産性や効率化で切り捨てられていく、そんな個人をばかにしない。
当然ですけど、「自分が、自分が」と前に出ていくのではない、あちこちで蹲ることを否定ではなく肯定で受け止める、そういう姿勢にほっとしました。
むかしの言葉でいう「癒し系」というより、「人権意識系」とでも言うんでしょうか。
安心感。
こういう言葉がたくさん広がって、それが当たり前になっていけば、この生きづらい世の中ももう少しましになるんじゃないか……と、希望を夢見たり。
読書メモは自分と向き合うことでもある
私は読書感想文をnote記事にするためにメモを取っていますが、文学作品のメモって、作者との対話たけじゃなくて、そのときの自分との対話でもあるんですよね。というのを、今回メモしていてしみじみ思いました。
あ、なんか、肯定されたがってるじゃん自分、みたいな。
「好き」はセンスだ、という意見があることも知っていますが、私は「好き」には理由がある、と思っているので。そして大人なら、その「好き」の理由を言葉で表現できたらいいね、と。
まあ、それって自分自身の内省行為なので、しんどい作業なときもありますけど。
でも、見えてくるものも多いので。
私は、自分も短歌を作りたい読者ではなく、単純に短歌の世界に浸りたい読者なので、そういう方向に行ってるのかもしれませんが。
創りたい人なら、自分が詠むべき短歌がばしばし出てくるのかもしれないし。
いろんな読み方があって当たり前なので、みんなそれぞれ好きなように読んで楽しめたらいいね。
さりげない、楽しい読書に祝福を。ありがとうございました。
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