30代女性編集者が、お金本5冊読んで語り合ってみた。お金って、結局なんですか?
100円玉、PayPay、クレジットカード、見慣れない新札。「お金」って結局何なのでしょう?
お金と国家はつながっている?
◆ニレ:
お金がないってやっぱり不安やんな。
●おじ:
リーマンショックのあおりを受けて会社を辞めたくちなので、お金がない怖さはすごく感じてた。お金欲しい!って切実に思ってた……。
★はる:
『ふしぎなお金』では、財布を「拳銃」に見立ててるんだよね。まわりが銃をもってるのに、自分だけ持ってないとすごく怖い。みんな持ってなければ、なくても大丈夫なんだけど。
◆ニレ:
お金は護身用の武器か。たしかに、「いざという時のため」にお金は必要やな。とはいえ国が潰れたりする危機では使い物にならへんけど。
■ウメ:
私たちが使うお金って「日本銀行券」なんだよね。お金って国家と密接な関係だなって思った。
★はる:
『貨幣の歴史』によると古代ローマでコインが作られたのって、戦争の軍事費を拠出するためだったらしい。いまのブロック・チェーンとかは、国家権威によるお金から脱却しようとしているのかな。
◆ニレ:
地域通貨の試みもあるよな。私が住む世田谷区ではみんな「せたがやPay」を使ってるわ!地域限定通貨アプリ。還元率が良いみたいで、思った以上に流通してる。
●おじ:
そういうコミュニティだけの通貨って楽しいよね。小学生のとき、トレーディングカードを交換したけど、あれも通貨かな。キラキラカード1枚は普通の3枚とかってレートを決めてたけど(笑)
江戸時代、「お金がなくても、豊か」ってホント?
■ウメ:
『21世紀の楕円幻想論』には、お金が登場してから「等価交換」って概念が生まれたって書いてある。それまでは、モノとモノのやりとりは不均衡な交換だったのに、お金登場以降は等価交換一色に……。
★はる:
そっか、モノの価値って本来は人によって変わるもんね。自分にとっては大事なモノでも、市場では300円とかになっちゃうのは悲しい。お金以外にも価値を測る尺度を持てるといいのかも。
◆ニレ:
そういえば、江戸時代は、SDGsな社会ってイメージあるけど。『江戸の経済』はどうだったの?
●おじ:
江戸時代はとにかくお金がなかった! お金を巻き上げたい幕府と、庶民の攻防の260年と言えそう。例えば、江戸のメディアを席巻した蔦屋重三郎は「風紀を乱す」といって、幕府に財産の半分を没収されたんだって。
★はる:
ひどい! そんなことしたら文化が廃れそう。
●おじ:
そうなんだけど、蔦重はその後も踏ん張るんだよね。写楽の歌舞伎をプロデュースしたり。でも写楽の絵、当時の経済的には大赤字だったらしい。
◆にれ:
ええ〜。お金と文化ってかならずしも比例しないのね。お金がなくても文化はつくれるってことか。
お金が必要なのは、共同体の「ソト」?
■ウメ:
『お金のむこうに人がいる』を読むと、お金で買っているのは「人の労働」なんだよね。もしパンを作る人がいなけりゃ、1億円あってもパンは買えないわけで。
◆ニレ:
誰かが私の代わりに働いてくれる手当、と考えると、気持ちよくお金を払える気がする!
●おじ:
そうそう、このまえ事務所の引っ越ししたら、業者さんの仕事がすごすぎて喜んでお金払ったよ。
★はる:
お金って気持ちを伝えるメディアでもあるのか〜。
◆ニレ:
お金があることで、できることは増えてるのかもね。お金のない世界ってありうるんやろか?
■ウメ:
私たちは、家ではお金を使わないよね。こどもから夕飯代を徴収することはない(笑)。家族ってひとつの共同体だからお金を使わなくてもまとまれる。
◆ニレ:
そっか、お金って、共同体の外の人とつながるときに必要なのか。
★はる:
「お金の媒介が必要のない内側」と「お金によってつながる外側」があるってこと?
■うめ:
そうだね。お金は「外とつながっていくための道具」って思うと、使い方も変わりそう。お金って本当にいろんな面をもってるね。
今回取り上げた5冊は、以下ページで詳しく紹介しています。
1冊目●『ふしぎなお金』
赤瀬川原平(著)筑摩書房 2022
2冊目●『〈ヴィジュアル版〉 貨幣の歴史』
デイヴィッド・オレル(著)角敦子(訳)原書房 2021
3冊目●『浮世絵と芸能で読む 江戸の経済』
櫻庭由紀子(著)笠間書院 2023
4冊目●『21世紀の楕円幻想論─その日暮らしの哲学 』
平川克美(著)ミシマ社 2018
5冊目●『お金のむこうに人がいる─元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが
書いた予備知識のいらない経済新入門』
田内学(著)ダイヤモンド社 2021
「ほんのれんラジオ」では、4人のやりとりを生収録。続きは、ほんのれんラジオで。