【編集先記】驚異と癒しの圧倒的アンモナイト空間!三笠市立博物館編vol.1
夏だ!化石だ!
化石ラバーの皆さま、元気ですかっ!!
某出版社から刊行予定の某化石案内本を作るため、相変わらず全国の博物館をまわっている編集長です(詳しくはこちらを)。
毎日暑いですね。
なので今回は、涼しい記事をお届けしたいと思います。
訪れたのはこちら。
北海道の三笠市立博物館!
建物天井を突き破って2体の海棲爬虫類が出迎えてくれる三笠市立博物館は、「アンモナイト博物館」の異名をもつアンモナイトだらけの博物館(つまり喰われている方が主役)です。一歩足を踏み入れるとそこは……
白亜紀の海……!?
早速、太古の海中探索とまいりましょー!
今回案内してくださるのは、アンモナイト類がご専門の唐沢與希先生です。
お世話になります。よろしくお願いします!
***
圧倒的アンモナイト!
まずはなんといっても、この巨大アンモナイトの大群です。
「これだけ大きなアンモナイトがドーンと並んでいる光景は、他ではなかなか見られないので、まずはこの迫力を感じてもらいたいです」
とは唐沢先生。
聞くと、手前により大きなアンモナイトを置くことで、広い海の奥行きを演出しているそう。
中でも最も大きいのがこちら。
直径 約1.3メートル
重さ 約580キロ
580キロですって。なんとまぁ大きく育ったものです。
いやでも、ちょっと想像してみてください。こんなに大きくて重い生き物が海を泳いでいた…? いやいや、シンジラレナイ。
先生、納得のいくご説明を。
「アンモナイトの殻の中は空気タンクになっているので、ぷかぷか浮きます。生きているアンモナイトを水の中で抱えたとしても、それほど重さは感じないはずです」
ほぅ。この大きな殻が浮きの役割を担っていたのならば、そりゃ浮きますわな! 納得。
死ぬと空気タンクの中に水が入ってきて、海底に沈んでしまうのだそうで。その中で運のいいものが化石となり、こうして現代に発掘されて、標本として第二の人生を生きているのですね。
しみじみ。。。。
ちなみに世界最大のアンモナイトも模型で展示されています。
でかい!
直径およそ2.5メートル。
白亜紀の海、恐るべしです。
アンモナイトの模様?
この世界最大のアンモナイトの実物大模型には「さわらないでね」と注意書きがありますが、裏を返せば、注意書きがないものは基本お触りOKということ。
これでもかと剥き出しで置かれた巨大アンモナイト群も触ることができます(もちろんケースに入っているものはダメ)。
じゃあ早速失礼して。
(さわさわ)
…ん? この模様はなんだ? なんだか不思議な凹凸があります。
唐沢先生
「これは殻自体に入っている模様ではなく、縫合線と呼ばれるものです。アンモナイトの殻の中には仕切り板があるのですが、殻の表面が削れたことで、その接合部が表に出てきているんですね。仕切り板は真っ直ぐではなくぐねぐね入り組んでいるので、このような複雑な模様を描くんです」
オウムガイはこんな感じで仕切り板がきれいなのですが、
アンモナイトの仕切り板は複雑にうねっているのだそう。
例えば表面がつるつるに磨かれたアンモナイト化石にもこんな模様がよく見られますが、これも縫合線なのです。↓
ちょうど仕切り板が見えている化石がありました。わかりますか?↓
縫合線の模様は種類によって異なるそうで、研究では主に分類に重宝されるのだとか。気ままにうねっているようで、ちゃんと規則性があるのですね。
しかも、一般に時代の新しいものほど曲線が複雑になると言われており、アンモナイトの進化を探る研究にも用いられているそうです。
やばい、これから博物館でアンモナイトを見つけたら、縫合線にやたら注目してしまいそう。
んでもって「これとこれは縫合線がまるで違うな」とか「この縫合線は複雑だ、なるほど時代が新しい」とかボソッと呟いて、うっかり一目置かれてしまいそう…!
アンモナイトのヘソ?
あと、アンモナイトといえばぐるぐるなわけですが。
ぐるぐるを見ると、その中央がどうしても気になってしまうのが人の性ってもんです。
実は、この取材の前に著者から届いた草稿を読んでいて、気になる記述がありました。アンモナイトの説明の中に「ヘソ」という表現が出てくるのです。
著者が言うこの「ヘソ」、きっとぐるぐるの中央部分に違いない…!
そう踏んで尋ねてみたら、やはりそうでした。
唐沢先生
「ぐるぐるの中央の奥の方まで残っているものを、“ヘソがきれい”と表現したりしますね。アンモナイトは外側に向かって殻が成長していくのですが、この真ん中部分は子どもの頃に作られたもので殻がすごく薄いので、特に大きなアンモナイトでは化石化の途中で溶けてなくなってしまうんです」
大きいアンモナイトは死んで海底に沈んだ後、殻全体が堆積物に埋まるのに時間がかかり、その過程で長いあいだ海水にさらされるため殻の薄い部分(=ヘソ)が残りづらいのだそう。
一方、小さいものでは堆積物に埋まるのが相対的に速いため、ヘソまできれいに残った化石も珍しくないそうです。
そんなお話を聞いたら、俄然“きれいなヘソ”が見たくなりますよね。幸い、ここは日本一のアンモナイト博物館。ないわけがない!
……というわけで、ここで三笠市立博物館屈指のヘソ美人に登場していただきましょう。
おお! ヘソまできれいなぐるぐる〜!
アンモナイトは化石の産出量が多いため、流通品のなかには手が加えられたものも少なくないとか。ヘソの奥まできれいにぐるぐる巻いているものでも、加工されている可能性もあるので要注意ですよ。
驚異と癒しの圧倒的アンモナイト空間!三笠市立博物館編vol.2へ続く
【お知らせ】
三笠市立博物館では、令和5年度特別展『復元―蘇る、北海道の古生物たち』が開催中。10月9日(月)まで。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?