ぜんざいを巡る冬のあったか旅【後編】[丹波大納言小豆ぜんざいフェア](兵庫・丹波市)
さて、柏原駅の「レストラン山の駅」のぜんざいでお腹と心を満たされつつも出発。商店が立ち並ぶ道をずんずんと進んでいきます。行く道中も街並みには季節の移ろいが見られ、旅をしているなぁと感じられる一幕がありました。
「M-CAFE」
駅から10分ほど歩いて住宅街に入ると、ひっそり現れるのが、2軒目の目的地「M-CAFE」。定員14名の小さなかわいらしいお店です。モーニングからぜんざいが味わえますが、落ち着いて過ごしたい人は11時以降がおすすめ。
そんな「M-CAFE」のぜんざいは、「昔ながらのぜんざい(900円)」。もちろん、丹波大納言小豆を使用しています。こちらは、丹波市春日町産のものを中心に、氷上町産のものを使用することもあるとか。
こちらのぜんざいの下ごしらえは、圧力鍋で炊いています。そうすると粒が崩れず、美しく仕上がるのだそう。その後、数十分煮詰めて、とろみを出していきます。体にいいと言われているてんさい糖で甘みをつけたら、塩と、隠し味に国産はちみつをほんの少し。このレシピは、店主の特製なのだそう。家庭の味をちょっぴりのぞき見しているような、そんな気持ちになります。
食べてみてびっくり。とても深みがあるお汁です。ただ、丹波大納言小豆はそのものの風味が豊かなので、あずきのやさしい味わいもしっかりと残っています。ほのかな塩味が味の輪郭を浮き立たせ、より甘さを感じる仕上がりです。でもなぜか、後味はすっきり。その味の奥行きはとても不思議で、ひとくち、またひとくち、とその味わいにスプーンを口に運ぶ手が止まりません。
こちらのぜんざいは、あずきの歯ごたえがしっかりあるのも特徴。粒が溶けずに残っており、一粒一粒のホクホクとした食感が楽しめます。口に含んだときに「いま、あずきを噛んでいるな」という感覚はありつつも、口に残らずにスッとなくなっていく皮。まさに、丹波大納言小豆のポテンシャルが生かされている一杯だなと感じました。
お餅は、大きな杵つきの焼き餅。こちらも関西では珍しい角餅でした。お店で香ばしく焼いたお餅の焦げが、食欲を掻き立てます。伸びのいいお餅は、コクのあるお汁との相性も抜群です。
「M-CAFE」の店主は丹波市出身。第二の人生としてコーヒーの勉強をして、11年前にこのお店を開店しました。はじめはコーヒーだけを出す喫茶店にしようと思っていたそうですが、今ではモーニングやランチを目指すお客で賑わうお店になっています。
ぜんざいは当初メニューになかったそうですが、「丹波大納言小豆ぜんざいフェア」が始まった初年度にメニューとして開発。数年経った今ではすっかり定着し、「ここのぜんざいじゃなきゃ!」と、冬になると遠方から来るお客もいるほどのメニューに。ぜんざいは冬季のみの販売、数量限定で売り切れ次第終了です。
各店のぜんざいを食べ比べよう
今回、はじめてぜんざいを食べ比べてみましたが、各店の味の違いにはとても驚きました。丹波市を巡って、自分好みの味のお店を見つけてみたいと思います。
せっかく店舗を巡るなら、スタンプラリーにも参加したいところ。フェアの開催期間中に参加店舗でぜんざいを食べると、スタンプが一個押印されます。スタンプを集めて応募すると、スタンプの数によって抽選で賞品が当たります。スタンプラリーの台紙がついたパンフレットは、参加店や市役所、観光案内所などで配布しています。また、Instagramにてフォトコンテストも開催中で、そちらでも入賞すると商品が当たるそうです。
「1日でそんなにたくさん食べれないよ!」という人もいるでしょう。せっかく訪れたなら、ほかのメニューも食べたいですよね。でも、対象の大納言小豆を使用した持ち帰り商品の購入でもスタンプラリーに参加が可能です(全体で2個の押印まで有効)。
それにしても、今回巡ったのは参加34店舗のうちのわずか2店舗で、残り32店舗のぜんざいが未食。先は長いですが、まだまだ楽しみが続きます。
今回は、比較的巡りやすい柏原エリアで、「丹波大納言小豆ぜんざいフェア」を体験しました。丹波市は広く、徒歩ではアクセスが難しいエリアが多くあります。そういった場所だからとあきらめるのではなく、どうやって攻略するか……と考えることもまた、旅の醍醐味のひとつなのでしょう。ようやくたどり着いた先に、まだ見ぬ新しい出会いがあるかもしれません。期待が高まります。
冬の味覚、ぜんざい。丹波が誇るこの一杯の中には、各店のこだわりと地域の魅力がたくさん詰まっていて、心も体もあたたまります。ぜひ、寒い季節は丹波市の甘い旅にでかけてみてください。
文・写真=濱口真由美