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[雪月花]日本の美を表す三字熟語から、花の空間を演出する|笹岡隆甫 花の道しるべ from 京都

花にまつわる文化・伝統芸能などを未生流笹岡・華道家元の笹岡隆甫さんがひもとく連載コラム『花の道しるべ from 京都』。第38回では、昨年笹岡さんがテレビ番組で日本の美を表す三字熟語「雪月花」、「白銀比」を元に、演出した空間について綴っていただきました。

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暑さが一段落し、秋の花が顔を出しはじめると、おのずとイベントも増える。昨年9月には、大阪「日本料理 楽心」と初めてのコラボイベントを行った*。何十回と通っている大好きなお店で、6月の「わかめご飯」と10月の「松茸ご飯」は外せない。お店に寄せていただくたびに、ご主人の片山心太郎さんから「一緒に何かをしましょうよ」とお声がけいただくのだが、食事をしながらの会話だけでは、なかなか具体化しない。そこで外の目を入れようと、共通の友人であるMBS毎日放送の本郷義浩プロデューサーに加わってもらい、「京都知新」というテレビ番組にするという形でコラボが実現した。私からの挑戦状に片山さんが応じるというイベントの骨子は、本郷さんのアイデア。「序破急じょはきゅう」「朧月夜」「白銀比」といった日本の美を象徴する三字熟語を私からのお題として提示し、片山さんがそれに合わせた料理を提供するという趣向だ。

「白銀比」をイメージしたいけばな

*2024年3月に紹介したイベントの初回にあたる

空間演出は「雪月花」をテーマとして、いけばなで表現した。

照明を落とした廊下を露地に見立てる。手前には白石を敷き、ハギ、ユリ、コチョウランと、いずれも純白の花。「雪」の降り積もる光景を演出した。露地を進むと、奥には「月」に供える「華包はなつつみ」*。ススキを主役に、秋の花が顔をそろえる。「雪」とのつながりを意識して、まずはハギ。そこにオミナエシ、ヤマシャクヤクの実を加え、彩りを添えた。そしていよいよ「花」。お店の突き当り、カウンターの裏にある中庭でのいけばなパフォーマンスだ。大きな松を立ち上げて、その下に真っ赤なウメモドキの実、色とりどりの菊を合わせた。ヤマシャクヤクの実も加えて、先の「月」とのつながりをもたせる。

*華包は、和紙を熨斗のしのように折り、そこに季節の花を挿したもの。江戸時代の遠州流の伝書には、「松包」「椿包」など、それぞれの花に合わせた包み方が残されている。

純白の花々で「雪」の降り積もる光景を演出
「月」に供える華包。ススキを主役に秋の花々で彩る
真っ赤なウメモドキの実と色とりどりの菊で「花」を表現

京都御所の東、梨木神社で萩まつり

ススキ、ハギ、菊……。秋の花が咲き始めると、京都の街は再び大勢の行楽客で賑わう。この季節に足を運びたいのが、京都御所の東に位置する梨木なしのき神社。「萩の宮」とも呼ばれ、境内には500株以上の萩が植えられている。毎年9月後半には、「萩まつり」も催され、多くの参拝者が訪れる。境内には、京都三名水のひとつ「染井そめい」があり、料理人や地元の人たちも御神水を求めてやってくる。

伝統文化の魅力を伝え、地球環境への理解を深める

この9月にも、イベントを企画している。「DO YOU KYOTO? ネットワーク」による「つなぐ~月と菊のえん~」だ。地球規模で進む環境破壊に対し、自然と共生する持続可能な暮らしを実践してきた京都から声をあげようと、伝統の継承者が集い2009年7月に発足した「DO YOU KYOTO? ネットワーク」。2022年7月には、有志により「KYOTO Sustainable Network」を結成し、子どもたちや若い世代に向けて伝統文化の魅力を伝えることで、地球環境への理解を深める活動を行っている。今年は発足から15年の節目にあたり、記念のイベントをしたいと考えていた。

箏曲(大谷祥子)といけばな(池坊専好)のコラボ、トークセッション、観客参加型のサステナブルクイズ、独調(曽和そわ鼓堂こどう、橋本忠樹)といけばな(笹岡隆甫)のコラボなど、盛りだくさんの内容だ。舞台背景は木村英輝さん、司会は越前屋俵太ひょうたさん、桂紗綾さん(朝日放送テレビアナウンサー)と、ご縁のある方々にもお手伝いいただく。9月16日(月・祝)13時~、京都駅ビル 室町小路広場にて、観覧無料。ぜひ足を運んでいただきたい。

文・写真=笹岡隆甫

萩まつり
2024年9月21日(土)~23日(月・祝)
梨木神社
[所]京都市上京区染殿町680
市バス4・7・205号系統「府立医大病院前」バス停下車徒歩3分
☎075-211-0885
https://www.nashinoki.jp/

つなぐ ~月と菊の宴~
[とき] 2024年9月16日(月・祝)13時~14時
[ところ] 京都駅ビル 室町小路広場
    (雨天はホテルグランヴィア前広場)
[問合先]京都市環境政策局地球温暖化対策室
☎075-222-4555

笹岡隆甫(ささおか・りゅうほ)
華道「未生流笹岡」家元。京都ノートルダム女子大学客員教授。大正大学 客員教授。1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒、同大学院修士課程修了。2011年11月、「未生流笹岡」三代家元継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、2016年にはG7伊勢志摩サミットの会場装花を担当。近著に『いけばな』(新潮新書)。
●未生流笹岡HP:http://www.kadou.net/
Instagram:ryuho.sasaoka
Twitter:@ryuho_sasaoka

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