[雪月花]日本の美を表す三字熟語から、花の空間を演出する|笹岡隆甫 花の道しるべ from 京都
暑さが一段落し、秋の花が顔を出しはじめると、おのずとイベントも増える。昨年9月には、大阪「日本料理 楽心」と初めてのコラボイベントを行った*。何十回と通っている大好きなお店で、6月の「わかめご飯」と10月の「松茸ご飯」は外せない。お店に寄せていただくたびに、ご主人の片山心太郎さんから「一緒に何かをしましょうよ」とお声がけいただくのだが、食事をしながらの会話だけでは、なかなか具体化しない。そこで外の目を入れようと、共通の友人であるMBS毎日放送の本郷義浩プロデューサーに加わってもらい、「京都知新」というテレビ番組にするという形でコラボが実現した。私からの挑戦状に片山さんが応じるというイベントの骨子は、本郷さんのアイデア。「序破急」「朧月夜」「白銀比」といった日本の美を象徴する三字熟語を私からのお題として提示し、片山さんがそれに合わせた料理を提供するという趣向だ。
空間演出は「雪月花」をテーマとして、いけばなで表現した。
照明を落とした廊下を露地に見立てる。手前には白石を敷き、ハギ、ユリ、コチョウランと、いずれも純白の花。「雪」の降り積もる光景を演出した。露地を進むと、奥には「月」に供える「華包」*。ススキを主役に、秋の花が顔をそろえる。「雪」とのつながりを意識して、まずはハギ。そこにオミナエシ、ヤマシャクヤクの実を加え、彩りを添えた。そしていよいよ「花」。お店の突き当り、カウンターの裏にある中庭でのいけばなパフォーマンスだ。大きな松を立ち上げて、その下に真っ赤なウメモドキの実、色とりどりの菊を合わせた。ヤマシャクヤクの実も加えて、先の「月」とのつながりをもたせる。
京都御所の東、梨木神社で萩まつり
ススキ、ハギ、菊……。秋の花が咲き始めると、京都の街は再び大勢の行楽客で賑わう。この季節に足を運びたいのが、京都御所の東に位置する梨木神社。「萩の宮」とも呼ばれ、境内には500株以上の萩が植えられている。毎年9月後半には、「萩まつり」も催され、多くの参拝者が訪れる。境内には、京都三名水のひとつ「染井」があり、料理人や地元の人たちも御神水を求めてやってくる。
伝統文化の魅力を伝え、地球環境への理解を深める
この9月にも、イベントを企画している。「DO YOU KYOTO? ネットワーク」による「つなぐ~月と菊の宴~」だ。地球規模で進む環境破壊に対し、自然と共生する持続可能な暮らしを実践してきた京都から声をあげようと、伝統の継承者が集い2009年7月に発足した「DO YOU KYOTO? ネットワーク」。2022年7月には、有志により「KYOTO Sustainable Network」を結成し、子どもたちや若い世代に向けて伝統文化の魅力を伝えることで、地球環境への理解を深める活動を行っている。今年は発足から15年の節目にあたり、記念のイベントをしたいと考えていた。
箏曲(大谷祥子)といけばな(池坊専好)のコラボ、トークセッション、観客参加型のサステナブルクイズ、独調(曽和鼓堂、橋本忠樹)といけばな(笹岡隆甫)のコラボなど、盛りだくさんの内容だ。舞台背景は木村英輝さん、司会は越前屋俵太さん、桂紗綾さん(朝日放送テレビアナウンサー)と、ご縁のある方々にもお手伝いいただく。9月16日(月・祝)13時~、京都駅ビル 室町小路広場にて、観覧無料。ぜひ足を運んでいただきたい。
文・写真=笹岡隆甫
▼連載バックナンバーはこちら
最後までお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、ウェブマガジン「ほんのひととき」の運営のために大切に使わせていただきます。