朝ドラ「虎に翼」にも登場した、現存する日本最古の控訴院建築|甲斐みのりの新幹線で建築さんぽ(名古屋駅)
名古屋の建築散歩で一番におすすめしたいのが、名古屋城の東側に位置し、江戸時代の武家屋敷地区がルーツのエリア「文化のみち」。第二次世界大戦の戦災 を逃れたことで、名古屋の近代化の歩みを伝える歴史的建築物が多く残る一帯だ。中でも1922(大正11)年に、名古屋控訴院*・地方裁判所・区裁判所の合同庁舎として建設された「名古屋市市政資料館」は、今もっとも話題の建築。日本初の女性弁護士の一人で戦後に裁判官を務めた三淵嘉子さんがモデルのNHK連続テレビ小説「虎に翼」で、東京地裁など複数のシーンの撮影に使用されて脚光を浴び、ぐっと来館者が増えているという。
正面中央に緑の銅板のドーム屋根を設けた、左右対称、ネオ・バロック様式の 3階建ての建物の設計は、ジャズピアニスト・山下洋輔氏の祖父も在籍した司法省営繕課が手がけた。赤い煉瓦と白い花崗岩の外壁に、黒いスレート葺きの屋根を合わせた外観は荘厳で華やか。玄関の奥に広がる大理石造りの中央階段室には、正面の壁に花かごと天秤、漆喰仕上げの天井に太陽をデザインした2つのステンドグラスが。どちらも裁判の公平さを表す館のシンボルとして光り輝く。外観と中央階段室に加えてもうひとつ、国の重要文化財に指定されているのが、元は控訴院の議論の場だった3階の復原会議室。壁・天井とも漆喰塗りの上に紙貼りを施し、床には中国・天津の絨毯が敷かれて重厚な雰囲気。1979(昭和54)年まで中部地方の司法の中心だった庁舎には戦後の一時期、三淵嘉子さんも勤務していたことがあるそうだ。
他にも、明治憲法下の法廷を再現した司法展示室や留置場と、見どころあまた。小倉トーストを味わえる喫茶室で一休みできるのも、名古屋らしくて嬉しい。
他にも、明治憲法下の法廷を再現した司法展示室や留置場と、見どころあまた。小倉トーストを味わえる喫茶室で一休みできるのも、名古屋らしくて嬉しい。
文=甲斐みのり
写真=鍵岡龍門
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