映画が生まれるまち|杉田協士(映画監督)
列車を降りて他に誰の姿も見当たらない駅を出ると、一軒だけある食堂が目に入った。中を覗き、汁物の麺料理を食べていた男性に声をかけ、持っていたメモ帳に目的地の街の名前を漢字で書いて見せながら、どうやったらそこに行けるかを身振り手振りで尋ねた。食べ終わるのを待つように、と読み取れるような動きだけ返してくれた。しばらく店の表で待った。
男性は原付バイクの後ろに乗せてくれた。山の中をうねうねとつづく坂道を登る間、重たいバッグを背負いながら、ただ振り落とされないことに集中していた。ずい