ファンベースの考え方②

TEN TO TEN 森田です。

本日は、以前記事にさせていただいた『ファンベースの考え方』の続編です。

前回版をまだ見られていない方は、よろしければ先に呼んでいただくと、話が分かりやすいかと思います。

早速ですが、ファンを増やしていくために、『傾聴から共感ポイント探し→自信を持ってもらうアプローチ→とにかく喜ばせる』という流れの取組みが重要になります。本日はこの辺りの要素をまとめていきます。

傾聴から始める共感ポイントづくり

共感とは、「そうそう、それそれ!」と強く膝を打つような感情のことです。
企業や商品のビジョンや共感ポイントが、まだ明確化されていない場合、ファンの言葉を傾聴することを出発点にすればいいとのことです。どうやら『このような価値を大切にしている人』がファンになってくれているという事実からの逆算ということですね。
支持されている、愛されている、共感されているポイントはどこか?ファンの言葉の中に企業が、まだ気づいていない「共感ポイント」がたくさん隠されているので、それを詳しく知ることはファンベースへの出発点になると言います。

ファンの言葉を傾聴する際に、アンケートよりもリアルなコミュニケーションの方がいいと言います。

アンケートなどではぼんやりする可能性が高いということですね。要は、ファンも何を支持しているのかがあいまいなケースが少なくないのです。
同好の士が集まると話が盛り上がるんですよね。「わかる!そういうところ好き」「へ~そういう楽しみ方もあるんだ?」「それ好きなの私くらいかと思っていた」など、ファン同士がお互いに発見し合う場づくりが大事ということです。この場で出てくる共感ポイントは、ファンがその企業を好きな偏愛ポイントにもつながるはずです。
この「偏愛」と「発見」こそファンミーティングのポイントであり、ここを理解しないとファンが支持していた「偏愛ポイント」を改悪してしまったりというマイナスアクションにつながってしまうということです。

改めて、ファンミーティングは宝の山です。
どういう傾向があり、どんな話題で盛り上がり、何を望んでいるか。
ファンの想いを知り、一緒に「価値」を変化・成長させていくことが大事と言われています。

ファンの定義が大切

ファンを探すのに公募が手っ取り早いのですが注意点として「ファンになり切っていない人」が興味本位で来てしまうケースが少なくないということがあるようです。
そうなると「偏愛」と「発見」が起こらない可能性が高いんですよね。(だって、本当にその企業や商品のファンではないから)
ちょっと面倒なくらいな量のアンケートを義務付けたり、自腹で来てもらうなど応募ハードルを上げて、よりファン度が高い層に来てもらえる工夫が必要になりますね。
「そんなことしたら参加者が減っちゃいそう・・・」と思われる方もいらっしゃるかと思います。ですが、目的に立ち戻りましょう。ファンベースの取組みを進める上で「何となくな参加者がたくさんほしい」のか「ファンやコアファンになってくれる参加者がほしい」のか。
改めてですが、ファンミーティングに期待するのは20%のファンであること、そしてその20%をちゃんと探し出すことです。(20∼50人くらいが参加目途)
費用をかけてきれいにやらなくても、ファン同士のリアルな「顔見にケーション」が目的なので、等身大で実施したほうが親密に盛り上がっていくので、手作り感のあるコミュニティの方が喜ばれる可能性も高いです。

ファンであると自信を持ってもらうために

ファンは「(思っているほど)自信がない」ということをまず理解する必要があるとのことです。私も自分の好きなブランドについて、「これって人に伝えたらダサいとか言われるのかな?」とちょっと不安になったりします。まさに、これが「思っているほど自信がない」という状況な訳ですね。この商品が好きな自分いけてるか?ファンと言って笑われないか?友人に薦めても大丈夫か?などいろんな不安により、自信をもてない訳です。
自信を持ってもらうには、他のファンのオーガニックな言葉に振れやすいようにして、自分が支持している「価値」に自身を持ってもらうことが大切になります。
他のファンの言葉や考えに触れ「このブランドを好きって言っていいんだな」「同じような人たちがこんなにたくさんいるんだな」と安心してもらい、自信をもってファンであると公言してもらえる状態をつくっていくということです。
そうなると、ファンはこのミーティング自体を類友にオーガニックリーチしていく(ファンが新たなファンを作っていく)という行動につながっていくということです。

▼自信がないファンに自身を持ってもらう方法
ファンやユーザーの声、有識者へのインタビューなどを
・アクセスしやすく(探しやすい)
・リンク元にしやすく(シェアしやすい)
・より自信がもてるように(共感しやすい)
バズは新規顧客への拡散という認識を持つ人が多いが、もちろんそうでありつつかなり難しい。それよりも「ファンに自身を持たせるのに効果的な方法」ととらえるべき

今後の様々なお知らせを公認ファン限定で送るために、メアドなどをゲットしていくといいとのこと(もしくは限定FB)
ファンミーティングに参加したファンは今後長く「応援」してくれる心強い味方になるわけですからね。
「価値」を支持しているファンをいの一番に優先する姿勢を明確かつ全面に押し出し、そしてファンをもてなし、喜ばせ続ける努力が欠かせません。

ファンに喜んでもらう意識と行動

傾聴し、自信を持ってもらったら、次は喜ばせるというPhaseに移ります。
喜ばせる=共感につながる膝うちポイントを増やすと、ファンは喜んでくれます。
そのために、傾聴したファンの言葉を出発点にし、喜びポイントを思考していくということですね。ただし、必ずしもファンの言うことを真に受ける、そのまま受け取る必要はありません。
かつ、ファンは20%の存在であるという認識も忘れてはなりません。ファンは意外とマニアックであり、ファンでない人にははまらないこともあるということです。
ですが、逆にファンだからこそ、ファン以外の人では喜ばなさそうなことでも喜んでくれるということにもなります。

役員や上司などキーパーソンに参加してもらうと、ファンは喜ぶので、経営陣や社内他部署を巻き込むことも非常に大事になるようです。

我々は囲い込まれるものではない〔ファンの声〕

よく「囲い込む」ということばを使う企業があります。しかし、ファンは囲い込むものではない、その発想自体がナンセンスだという認識が大事です。(そういう思考を持っていた方々は見直すいい機会だと思ってください)
商品やブランドを愛してくださる20%のファンはそもそも囲い込む必要がないし、そういうファンほど「囲い込む」ということを嫌うのです。
つまりは、友人や彼氏彼女に「私以外の誰とも会うな」というのは自身への愛着や信頼を失墜させる可能性につながるわけですね。

愛着を強くする

愛着を強くするとはどういうことか。それは、ブランドや商品を「他に代えがたい」ものにするということです。
愛着≠単に毎日習慣的に使っているだけ、機能的に優れているだけ
愛着=誰かからのプレゼント、旅の想い出、おばあちゃんの形見、エピソード/ストーリーがある品 etc...
他に代えがたい=そこにストーリーやドラマがあるものということです。

例えば、マツダのロードスター新車発表会は、ファンにいの一番に伝えたいがために、ファンミーティングの中で実施されることがあるとのことです。
つまり、メディアではなく、ファンである既存のお客さんを優遇し、情報を最初に知らせることで、自社に対し時間とお金を費やしてくれる人に「あなたは大切な方です」と知らせているのです。

常連さんも同じで、「お客さん」ではなく「森田さん」と呼ばれるだけで他の店舗と異なるでしょうし、そのコミュニケーションの中で店主の個人的な人生ストーリーや名物メニュー誕生秘話などを知っていくと、より「他に代えがたい」ものになっていくはずです。

他に代えがたい≠USP(Unique Selling Proposition)

USP(Unique Selling Proposition)とは、商品やサービスが持っている独自の強みを意味するマーケティング用語です。
▼USP
価格
品質の高さ
スピードの速さ
サービスの充実
カスタマイゼーション可能性
保証は充実度
ラインアップの広さ
利便性
専門性

注意すべきは、USPは他に代えがたいにはなり得ないということです。

なぜなら、USPにはユーザー体験や想い出、ストーリーもドラマも宿っていないので、すぐに陳腐化してしまうためです。

体験価値や情緒的価値

他に代えがたいとは、前述しているようにストーリーやドラマがあるものであり、そういったものに触れられる体験や情緒的価値がつくり出すということです。

商品にストーリーやドラマを纏わせることで、単なるモノではなく、他に代えがたいモノになるということです。

モノが多様化する中で、モノ自体に感動することは少なくなったということです。
友人や家族からプレゼントをもらうときも、プレゼント自体よりも、プレゼントしようと自分のことを考えてくれた「想い」「時間」「努力」がうれしいという方が少なくないはずです。
それらが単なる「モノ」を他に代えがたい「コト」に変えてくれる訳です。
企業も開発ストーリーや過去の苦悩、現在の努力などがわかると感じ方が変わってくるのだと思います。
モノの背景に「人」がいることをどうやって感じさせるかが、他に代えがたいをつくり出すためのポイントになるということですね。

真実の瞬間を大事にする

そういった情報を届けていく上で、ファンとの日常的な接点を大切にし、改善していき、接点を忘れられないものにしていく必要があります。

忘れられない接点を「真実の瞬間」と言われ、「真実の瞬間」=顧客が企業を判断する瞬間になるわけです。
企業とファンのあらゆる接点を真実の瞬間と考えて改善していくこと、そして他に代えがたい体験にすること。(言うは易く行うは難しですよね)
いかに難しいかの一例ですが、スカンジナビア空港は一回の応接時間が約15秒、つまりこの15秒で顧客の脳裏に印象が刻み付けられるわけです。しかし、この15秒を徹底的に大切にし、改善していったことで、スカンジナビア空港は業績を大幅に伸ばすことにつながったということです。

SNS担当者こそ愛着づくりの重要なポジション

真実の瞬間にもなれる可能性を秘め、愛着づくりの大切なポイントとしてSNSがあります。

優れたSNS担当者は、毎日「おはよう」「こんにちは」「今日もお疲れ様」など、ゆるい投稿でファンやユーザーや通りすがっただけの人と絡むことを意識しています。これは、商店街の魚屋のお兄ちゃんが、店前を通る通行人に「いってらっしゃい~」「いいのはいったよ~」というコミュニケーションをとっているのに近いアプローチです。

他にも、スターバックスの店員が、コーヒーカップに一言書いてくれることにも近いですね。
「いつもありがとうございます」「ファイト!」「いってらっしゃい」

何が言いたいかというと、SNSは一方的なお知らせではなく、SNS担当者は拡散担当ではない訳です。

SNS担当者≠日々の拡散担当
SNS≠単なる企業からの一方的なお知らせ発信
SNS担当者=日々の愛着を強められる担当
SNS=他に代えがたい愛着づくり

全ての施策・接点・活動において、誠実であることが何より大切ということです。

ファン参加型のコミュニティづくり

ファンづくりに大切なポイントとして、ファンが参加できる要素を増やすということがあります。つまり、ファンが参加できる場を増やし、コミュニティを活気づけていくということです。
参加し体験すると、他に代えがたい愛着が強くなりますし、ファンになってくれた人が参加できる場をつくっている企業は意外と少ないので、それ自体が他社との差別化につながるのです。
事例:ファン・コミュニティ、ファン・クラブ、プレミアム・クラブ etc...

そして、もう一つ理解しておくべきは、商品に対するファンづくりは難しいということです。レゴやアップルや車のミニのようなマニアックな人気を博するものを除くと、商品そのものにファン・コミュニティはできないと言います。
ファンとは、商品そのものではなく、「商品が大切にしている価値」を支持している人ということです。

ファンコミュニティで稼ごうとしてはいけません。
『ファンには売るな、ファンを通して外に売れ』と言われているくらいです。

社員を最強のファンにする

社外と同じくらい大切なのが社内のファンづくりです。社員の信頼を大切にし「最強のファン」にしていくということです。
実は、日本人は世界で一番自分が働いている企業を信頼していない国なんです。それはつまり、社員から信頼された企業は目立つ、社員が企業を信頼し、誇りを持って働いていることは、社外のファンの信頼に直結するということです。(これもまた他社との差別化ですね)

大切なのは、社内は社外であるという認識をもつということ。
社内=社外であれば、社内の愛着=社外の愛着、社内の信頼=社外の信頼という式が成立するはずです。

ファンがファンをつくるの逆もまた然りで、愚痴や批判が周囲に波及するのは本当にあっという間だと言います。

これだけ多様な商品や情報にあふれた中でファンを増やしていくためにも、まずは社員の「社に対する共感・愛着・信頼」を獲得することに重きをおいた取組みに着手するのもありだと個人的に思っています。
そうすると自社サービスの利用や理解に自ずとつながります。
スタバは40時間以上にわたる独自研修、そのほとんどはミッションの共有だといいます。

ファンが共感したり、愛着を持ったり、信頼を感じたりする「要素」を増やしていくことが重要であり、これらが増えることでファンがオーガニックなおすすめをするきっかけが生まれるし、言いたくなるような状況を作れるし、言いやすくなるような環境ができていくということです。

私も、まずは社内からファンを増やしていく。そのためのファンベースな取組みを新しいコミュニティで実践していこうと思います。

▼参考

今回の学びは『ファンベース』という本からのものです。

続編記事はこちら


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