よりよい人生を送るための一冊。『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
今回は "攻め”の対人関係について話をしましょう。
これまで受け身がちの話が多かったですね。
本マガジンでは「認知の歪み」がいかにネガティブ思考を生み出すかについて厚く解説してきました。
そして、そのネガティブ思考は繰り返しやってきて私たちを苦しめることも。
◎"攻め"の対人関係を目指していこう
今回は総仕上げです。
ネガティブ思考からの脱却どころではなく、よりよい対人関係を目指して積極的に働きかける……そんな攻めの考え方に迫っていきたいと思います。
そのためには『自分の小さな「箱」から脱出する方法』という書籍がとても参考になりますよ。
◎自分への裏切りとは①
たとえば駅の上り階段の手前でベビーカーを押しているお母さんが、途方に暮れているとします。
長い階段を赤ん坊とベビーカー、両方を抱えながら上らなければならないわけです。
(いまはだいぶバリアフリーが進んでいますが)
「ベビーカーを持ち運ぶのを手伝った方がいいかな」
そんな考えが頭の片隅に浮かんだりしないでしょうか。
でも私たちは、そんな困っているお母さんをスルーして道を急いでしまうことがあります。
実は、これは「自分への裏切り」なのです。
〇〇すべきだとわかっていることを行動に移さないわけですから。
◎自分への裏切りとは②
こうしたことは日常だけでなく、ビジネスの場面でも似たようなことがあるかもしれません。
あまり面識のない新人が途方に暮れた様子でコピー機の前で立ちすくんでいるとします。
ちょっと声をかけて「どうかしたの?」と聞いてみるだけで、新人は助かるかもしれません。
自分の方がはるかにベテランですから。
でも「いま忙しいし」「面倒ごとに巻き込まれるのも嫌だな」と、見て見ぬ振りをしてしまうことってないでしょうか。
「誰かが助けてあげてくれるといいな」などと思いながら。
これも「自分への裏切り」です。
なんとなくわかってきたでしょうか?
◎「自分への裏切り」が自己正当化に走らせる
このように、何か親切にすることを思いついたのに、それをしない「自分がほかの人にすべきだと感じたことに背く行動」のは、自分への裏切り行為ということです。
いったん自分の考えに背くと、この自分への裏切りを正当化する視点で、周りの世界を見るようになります。
「あのときの自分は忙しかった」
「困っているなら向こうから話しかけてくるべきなのだ」
「もっと助けるのに適切な人がいたはず」
やらなかった自分を正当化することで、現実を見る目が歪んできます。
自分ではなく周囲が悪いのだと……。
◎「箱」に入るということ
先ほど紹介した書籍『自分の小さな「箱」から脱出する方法』のタイトルにありますが、このような状況こそが「箱」に入っていることを意味しています。
「箱」に入ってしまうと、以下のような考えに陥ってしまいます。
他人の欠点を大げさにあげつらう
自分の長所を過大に評価する
自己欺瞞を正当化するものの価値を過大に評価する
相手に非があると考える
これが当たり前になると、こうした「箱」を心の中に持ち運ぶようになります。
こういう行動をとるのが自分の性格だと見なすようになるわけですね。
ちなみに「箱」の中に入るのに「自分への裏切り」は必ずしも必要ありません。
もし以下のような精神状態だとしたら、裏切りはもう済んでしまっていて、実はすでに「箱」の中に入っています。
相手のために何かをしようという気持ちにならない
自分の感情に背いていないと感じるとき
自己正当化イメージを持っている
この場合の自己正当化イメージとは、たとえば「自分は人を思いやれる人間だ」のような思考を指します。
そのような状態で見えているのは自分だけで、他人のことは何一つ視界に入っていません。
◎どうしたら「箱」から出られるのか?
では、どうしたら「箱」から出ることができるのでしょうか……?
実は「箱の外に出たいと思ったとき、既に箱から出ている」のです。
「箱」から出られると「ほかの人にしてあげたいと思うこと」が生まれます。
今度こそ、自分を裏切らない行動を取ることができるでしょう。
具体的に、箱の中から出るためのきっかけは「自分が間違っているのかもしれない」と疑うことだったりします。
◎どうしても「箱」に入ってしまう瞬間がある
どれほど「箱」に入るまいと心がけていても、相手の人間性が私たちを「箱」に閉じ込める瞬間があります。
実は日常生活でこのようなことは絶えず起こっているのです(たいていはすぐに忘れてしまいます)。
また、現実問題として他の人のために、した方がいいことをすべて行っていられないという事情もあるでしょう。
ただ、せめて行うべきだという自分の感情は尊重してほしいと思います。
「箱」の中にいる自分は自己正当化に忙しく、不安定な状態で、心にも負担がかかります。
それに比べたら「箱」の外でしなければならないことは、それほど大したことはないでしょう。
つい「箱」の中に入ろうとする気持ち……わかります。
それでも「箱」の外にいようとする努力は絶えず行ってほしいのです。
今回は『自分の小さな「箱」から脱出する方法』の中から自分に響いた部分を抜粋しました。
書籍自体は多くが会話調で構成されており、内容も説教くさくなく、とてもわかりやすいです。
ぜひ皆さんにも手に取ってほしいなと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。