マツヨイグサ
寺田寅彦の『花物語』を読み返し、私も花について書いてみようと試みる。
『花物語』にあった「月見草」から、あら、ふと、月見草はマツヨイグサのことか、いや月見草は月見草か、とわからなくなる。道端で見かける、私の思い出にあるのは写真の黄色の花。
子供のときは、月見草とも、マツヨイグサとも言っていたけれど、改めて調べるとツキミソウは花びらが白色でピンク色に変化する、咲き始めは夕暮れで翌朝には花はしぼむ。
一方のマツヨイグサは黄色の花びらで、咲き始めとしぼむ時間帯はツキミソウと同じ。
私が馴染みのあるのは黄色のマツヨイグサ。昼間の花はしおれていペシャっとなっているが、夕方になると別の新しい花が咲くのがおもしろくて、咲くのをよく見届けていた。
マツヨイグサの咲く夏の夜、小学生の頃は毎晩のように花火をした。一日に使える花火の本数や種類は親との約束で決められている。
子供としてはもっと遊びたいけれど、約束を守らないと明日から花火ができなくなる。
そこで私はマツヨイグサを折って、花火に見立てて遊んでいた。オクラみたいにシュッと先が細くなっている蕾は、火をつける前の花火。
咲いている花は、火がついたあとの花火。煙も音も光もないけど、想像力でずっと遊べる手持ち花火だ。
夏が終わって寒くなっていくと、マツヨイグサは立ち枯れして種を作っていた。枯れたリンドウみたいな形のサヤの中に種がある。枯れた茎を折ってぶんぶん振り回せば、サヤの中の種がカサカサいいながら私に振りまかれていく。枯れてもなお私に折られて振り回されるマツヨイグサであった、とさ。