技術に対する倫理を変えるのはナラティブ

読んだ。

本書は生命科学の最先端であるゲノム編集技術CRISPR-cas9を開発し、ノーベル賞を受賞した女性科学者ジェニファー・ダウドナの伝記である。筆者はスティーブ・ジョブズの伝記で有名なウォルター・アイザックソン。

『コードブレイカー』では、ダウドナを中心にDNAの「二重らせん」の発見からゲノム編集技術に関連する多様な人物とその活躍を紹介している。しかし、俺が特に注目したのは、ゲノム編集技術の倫理的側面である。この技術によって理論的には理想的なDNAを持つ子供を作り出すことができるが、果たしてそれが許されることなのだろうか。

ゲノム編集技術を遺伝病疾患を治すために使うのは良いことだろう。しかしマイナスをゼロにするのではなく、ゼロをプラスにするために使うのはどうだろう。IQを高める、筋力を増す、身長を伸ばすというように。また、単純に人が神の領域に介在する事に対し、直感的に否定する人もいる。当のダウドナもその一人で、彼女は自分が開発したCRISPR-cas9を用いて人間のゲノムを編集することに反対していた。

しかし次第に彼女の考えは変わっていき、いつの日か「ゲノム編集技術を使わないこと」が非倫理的だと見なされるようになるかもしれないと思うようになる。彼女の考えを変えたのは、遺伝病疾患に苦しめられている当事者たちの声だった。

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