
『パヨカカムイ ユカラで村をすくったアイヌのはなし』 かやの しげる・文 いしくら きんじ・絵 小峰書店
沖縄同様に北海道の先住民族アイヌの言葉も異国の地のようで、全く分からない。そして、独特の文化を継承している。
民族に惹かれる、わたし。
この絵本は、アイヌ民族に語り継がれた昔話。 一人でも多くアイヌの物語に親しんでほしい気持ちがあった、“萱野 茂”さんが、自身が少年時代に語っていた
《ユカラ》=昔話
を絵本にしたものです。
鹿や熊は大切なタンパク源。狩が下手なお父さんが得意なこと、それは、ユカラをはなすこと。
毎晩、こどもに昔から伝わるユカラを語っていたお父さん。
ある日、川岸へ現れた、病気をまき散らす神
《パヨカカムイ》
お父さんは、魚のしっぽやヒレをあつめて、器に入れてパヨカカムイにお願いします。
“ここにいらしても、何もありません。 僅かなお供えものですが、これを持って、どこかへ行かれてください”
その夜、お父さんの夢にでてきたパヨカカムイ。
“あなたのユカラが、あまりにも面白く、聞き惚れてしまって、病気をまき散らすことも忘れてしまった。あなたは、良い心を持っている。
ユカラは、子ども達だけではなく、人が死んだ時、熊を送る時にも話しなさい。”
人が死んだ時は、物語の途中から語り、最後まで語り終わること。 それは、死んだ人が、ユカラの続きを聞きたいと、この世に戻ってくることがあるから。
熊をとったときは、ユカラを最初から語って、話が面白くなったところで辞めること。 熊の神は、話の続きを聞きたくて、何度もアイヌのところに戻ってくるから。
こういった、昔から語り継がれる話は、 多々にして、“”自然と人間“”との関わり方を教えてくれています。
子どもの頃は、その話の全容がわからなくても、暮らし育つ中で、だんだんその意味がわかってくる。
父母が、祖父母が、近所の人が話していたな。
というような、そんな記憶を繋いでいく。
その村には、病気がはやることなく、鹿や熊もたくさん獲れるようになったとのこと。
ユカラを語ることで、村を守ることができる。
だから、ユカラを語り継いでいくことは、大事である。ということを伝えている絵本です。
伝承することの難しさ。時には、曲がりくねって、始まりの意味とずれているのかもしれない。
私の父も、寝る前に大蛇が出てくる話をよくしていたな。まぁ、それは面白おかしく作られた昔話だったけど、それがまた、今でも記憶に残るほど、私にとって楽しい時間だったのです。