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68万画素のミルクムナリ

「懐かしいものがある」と故郷の母が動画ファイルをよこしてきた。

低画質のそれを再生すると、幼い私が国際通りでエイサーの『ミルクムナリ』を踊っていた。パーランクーという小さな太鼓を叩いている。

沖縄県の伝統芸能であるエイサーは、旧盆の風物詩だ。大勢で隊列を組み、膝を高く上げて一糸乱れず躍動する。そうして祖先をあの世へ送り出すのだ。

片足立ちが苦手な私のミルクムナリは、本番直前まで酷い出来だった。練習で私だけ何度もコケたのは良い思い出だ。

そんな私が、だ。たった68万画素の私が、動画では見事な片足立ちを披露している。電脳世界の旅を経て、18年越しに努力の成果を見せつけてきたのだ。

前奏で深々と礼をする私、パーランクーを力強く叩く私、苦手な片足立ちをする私。沖縄の鋭い日差しを大股で蹴散らし、琉球の歴史を背負って踊る私は、どの瞬間も誇らしげだった。

この地で果てていった祖先を見送ることに、生一本だった。

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