ジャズ初心者も楽しめる! 大注目の「文學界」ジャズ特集はなぜ企画されたのか?【編集者通信】
10月7日に発売になった、「文學界」11月号はなんと「ジャズ特集」。
「文學界」編集長の丹羽健介が企画の裏側についてお話しします。
丹羽編集長自ら「ジャズ特集」にかける熱い思いを語ります……!
音声メディアvoicyの「文藝春秋channel」にて配信した内容を一部、活字にしてお届け!
音声全編はコチラからどうぞ
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「文學界」ってどんな雑誌?
—―はじめに「文學界」という雑誌について簡単な紹介をお願いします。
丹羽 創刊が1933年という歴史が長い雑誌です。もともとは小林秀雄などが発起人となって、同人雑誌として出発した文芸誌です。のちに文藝春秋がそれを引き取る形で、今に至っています。老舗文芸誌と言っていいと思います。
そもそも文芸誌とは、主に小説や評論を載せている雑誌です。だから手に取っていただくと文字が多くて、結構分厚いという印象を持たれると思います。
—―歴史がある雑誌ですが、最近は若者にも馴染みがあるコンテンツがある印象もあります。DJ松永さんの連載や、宇多田ヒカルさんと又吉直樹さんの対談などもありましたね。
丹羽 歴史が長いとは言え、毎月出ている雑誌なので、そのときどきのトレンドも取り入れてやっています。その点ではほかのどの雑誌とも大体同じだと思います。
書き手が若返ればどんどん雑誌も若返ります。若い人にも全然、読んでいただける雑誌になっているかと思います。また毎月読んでいるディープなファンではなくても、その時々に気になる記事とか、特集があったら読んでみる、という人も多いと思います。もちろん、そういう読み方も大歓迎です。
最新号は「ジャズ×文学」!?
—―10月7日に発売となった最新号の11月号では、なんとジャズの特集が組まれています。今回この特集が組まれた裏にはどのような経緯があったのでしょうか。
丹羽 はい。いい質問というか、当然の疑問ですよね。
なぜ「今」ジャズなのか、ということには、特に理由はありません(笑)。
編集長の独断というか、趣味が発揮されたということなんです。編集長になったときから、いつかはやりたいなと思っていた特集で、それがようやっと実現したという感じなんですよね。なぜこの特集が組まれたか、という理由は、僕がジャズが好きだからですね(笑)。
もともと音楽専門誌の中に、ジャズの専門誌がいくつかあるわけです。でも僕はジャズの本とか、ジャズについて書かれたものについて読んだりするのも、すごく好きなんですよね。ジャズと言葉は相性がいいな、とかねがね思っていました。
かつ、小説家でもジャズが好きって人は結構いらっしゃるんです。だから、音楽専門誌にはできないようなジャズの特集ができないかということで、11月号のジャズ×文学という特集ができました。
—―今回の目玉記事の一つは村上春樹さんのインタビューだと思います。
丹羽 村上春樹さんは、「ジャズ×文学」を考えた時に当然というか、真っ先に名前が上る人ですよね。村上さんの書いた本を通じてジャズに興味をもったという人は多分すごく多いと思いますし、自分もその一人です。
それからもう一人、小説家の筒井康隆さんに小説を書いていただきました。筒井さんも、「ジャズと文学」を考えた時に欠かせない一人なんですね。
今回、村上さんと筒井さんという二大巨頭に出ていただけたというのは、この号にとって本当に大きなことだったと思っています。
村上春樹さんの経歴をご存じない方のために、念のために説明すると、ジャズがちょっと好きな小説家、などではなくて、ジャズの専門家が小説家になったような方なんですよね。もともとはジャズバーの経営者だったわけですから、村上さんは普通の素人では太刀打ちできないような知識量の持ち主なんです。
だから今回は、村井康司さんというジャズ評論家に聞き手になっていただきました。実はvoicyのパーソナリティの村井君の、お父さんに当たる方なんですけれど(笑)。おかげで、非常にディープなインタビューになっているかと思います。
—―丹羽さんもインタビューに立ち会われたんでしょうか?
丹羽 はい。素晴らしい、楽しい2時間でした。村上さんも、思い入れのある内容なので、すごく思いを込めて語ってくださって。その空気感が、このページに保存されているんじゃないかと思います。
文芸誌でジャズ入門
—―今号は、ジャズに詳しくない方が読んでも入門編になるような内容でしょうか?
丹羽 村上さんのインタビューだけではなくて、特集全体がジャズ入門にもなるように、と思って作りました。村上さんにも「初めて聴くとしたらどういうのがいいですか?」と質問をしています。その他、色々なページにおすすめ盤が出てきます。
ちょっとジャズは難しそう、と思っている方にこそぜひ読んでもらいたいですね。
—―二大巨頭の村上さん、筒井さんだけでなく、平野啓一郎さんなど、それよりも若い世代の方も出ていらっしゃいます。
丹羽 ジャズって100年の歴史がある音楽なので、一口にジャズと言っても色んな種類の音楽があるんですよね。これだけたくさんの方に出ていただけると皆さんそれぞれのジャズ観の違いみたいなものが出ていて、面白いんじゃないかと思います。
—―山下洋輔さんと菊地成孔さんの対談も見逃せませんね。
丹羽 師弟関係にあるミュージシャンでもあり、二人とも文筆家でもあるということで、「ジャズ×文学」って言ったときには、この方たちも絶対に出ていただかないといけないなって人ですね。
――ちなみに丹羽さんは、大きなジャズのジャンルで言うとどのあたりが好きですか?
丹羽 僕はマイルス・デイヴィス原理主義みたいなところがあります。好きな盤をあげると、マイルスのものが多くなってくるかなって思います。結構モダンジャズよりですね。
もともと、フュージョンというか、バカテクみたいなものも好きだったんですけれど(笑)、年齢と共により渋いモダンジャズの方に興味がよっていったんですよね。
聴いても楽しいジャズ特集
—―今回は、特集に登場する楽曲のSpotifyプレイリストが公開されています。こちらはどんな経緯で作成が決まったんでしょうか?
丹羽 このプレイリストは雑誌の巻末コードからも読み取っていただけます。トータル602曲、60時間近くで、すごく長いんです。別に全部聴かなくてもいいんですけれど(笑)。
Spotifyはアカウントさえあれば、比較的簡単に、誰でもプレイリストを作ることができるんですよね。せっかくこの、29人くらいの方たちそれぞれにおすすめ盤をあげてもらったので、それが聴けるのも楽しいかなと思い作成しました。
ぜひこれらの楽曲を、実際に聴きながら読んでいただきたいなと思います。僕自身、ジャズ喫茶で読書をしたりするのが好きなもんですから……。ジャズを聴きながら読書って、他の音楽よりも集中できる気がします。
全部ではないですけれど、ここに登場している方たちにあげてもらったおすすめ盤を片っ端からリストに入れました。そうしたら、60時間近くになってしまったという……(笑)。
—―辞書みたいに使えて素敵ですよね。知らない楽曲が出てきたら逆引きできますね。
丹羽 昔だったらレコード屋に行かなきゃいけなかったのが、今は「どういう音楽なのかな?」っていうのをすぐにスマホで検索できるようになっていますよね。
せっかくだったら、そういう雑誌の読み方というか、ジャズの聴き方もいいかなと思いまして。「この人が勧めているこの盤ってどういうのかな?」って思った時に、このプレイリストを参照してもらえるといいかなと思っています。
今号を通じて、今までジャズに興味がなかった人がこのジャンルの音楽に入ってもらう、その入り口になれば、と思っています。
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