無印良品銀座にてイベント開催 その4(最終回)
さて、前回の続きにして無印良品銀座イベント報告の最終回です。
作品のセッティングが着々と進行しております。
木枠の空間の中に、大型本が設置されると思しき板が現れました。
板がワイヤーで吊られていきます。
そしてついに、大型本が登場しました!
空中に浮かぶこの大型本のタイトルは、
「Medium XIV - hon ami I」。
太田さんのブックアート「MEDIUM」シリーズの系譜に連なる大型作品です。
「medium」は、媒体・中間、といった意味を持つ英単語ですが、
芸術家の表現手段、といった意味もあるようです。
太田さんがこのタイトルにどんな思いを込めているのか、
イベントでは明言を避けていましたが、
またの機会に詳しくお話を聞いてみたいと思いました。
本の構成要素を考える
イベントではこのhon ami新作を公開しつつ、
太田さんに作品についてお話しいただきました。
アートの受け取り方は人によってさまざまで、
自由に楽しんでいただければと思うのですが、
折角の機会なので太田さんからちょっとしたヒントをいただきました。
まず、この大型本には背に特殊な仕掛けが施されています。
箔押しされたタイトルの向こう側に透けて見えるのは、
背を綴じる糸です。
本来、背の糸は表紙で覆い隠すものですが、あえて背を見せるという
特殊な製本方法もあります。それが「コデックス装」です。
これは、ある写真集の背の部分ですが、
このように背をむき出しにするコデックス装が、
主にアート系の書籍を中心によく用いられています。
開きが良いので見開きのページは見やすいのですが、
耐久性にやや難があったりと、課題も多い製本方法です。
太田さんは、最近あるコデックス装の書籍を見て違和感を覚えたとのこと。そこには背を見せる必然性が感じられず、なんとなくかっこいいからコデックス装にしている、というように見えたそうです。
(コデックス装そのものを否定しているわけではありません)
本はなぜ背の部分を隠すのか?
背を見せる本を作る意味とは?
そんな問いを立てながら、今回の作品では背を隠しつつ、一部を見せるという、特殊な構造に挑戦しています。
本にとって背表紙とは何だろう? といったことを、
考えてみるのも面白いかもしれません。
本とは何か、を考える装置
そして、この作品を形作る重要な要素として、
木枠の話をしておかなくてはなりません。
木枠の四方から伸びたワイヤーで板が吊るされ、
その上の大型本が載せられています。
まるで本が空中に浮いているように見えるこの作品には、
どんな思いが込められているのでしょうか。
太田さんによれば、この木枠は「本とは何か」を考える装置として機能している、とのこと。
木枠の床に当たる部分は、印刷製本の現場で紙を積むパレットをイメージしています。
紙から出来上がる本は、さまざまな構成要素で成立しています。
すると、木枠の四方はその構成要素と考えることができます。
印刷、製本、デザイン、等々、
どこかでバランスが崩れると、本の体裁も崩れます。
数えきれない細かい要素が絶妙なバランスを取りながら、
本は成立しているのです。
ワイヤーで吊られた大型本は、そのような構成要素に支えられて存在する本の象徴として見ることもできるかもしれません。
もちろん、これも見る人それぞれが、いろいろな受け止め方をしていただければいいと思います。
まだまだ細かい説明はできると思いますが、
この連載ではこのあたりで止めておきたいと思います。
「hon ami」の販売第1作として、
近々、正式に作品紹介をすることになりますので、
ぜひご期待ください!
(無印良品銀座にてイベント開催 おわり)