タイミング
自分で主催している深夜の読書会は毎回テーマを決めてそれにあわせて本を紹介してもらっている。今回はそこから派生して読んでいたのは…
『暗幕のゲルニカ (新潮文庫)』
たまたま、ウクライナとロシアの紛争があるなかで読んでいると考え深い。
絵画には全く疎くてゲルニカも知ってはいても…だったが、作者原田マハさんが伝えようとしているメッセージが強く感じられるタイミングだったと思う。
本を読むということは、読まねばならないタイミングで現れるのかもしれないともおもう。
作家も書くとは、かかされるかのように向こうから呼びかけられるのかもしれないとそんなことを感じる。
『バスクに真の自由が訪れる日。それは、バスク人民を含む全スペイン国民が、いかなる政治的・宗教的・民族的イデオロギーの制約も受けず、一義的で単眼的な思想にも縛られず、高度な自治権のもとに、すべての人々が文化的生活を保障され、平穏で幸福な日常を送れるようになる。そしてその一切を無意識に享受できている。それこそが、バスクに自由が訪れた日の証となる……』」(448.449頁)
「バスク」をウクライナに、「スペイン」をロシアにではなく、バスクとスペインを「全世界」のに書き換えたらどう読めるだろうか…
そんな世界はおそらく達成はできないと個人的には思う。でもそれを求めている。
仏教では四弘誓願という仏菩薩の誓願がある。
その一句目は衆生無辺誓願度(しゆじようむへんせいがんど)であり、数限りない人々を彼岸(悟りの世界)に渡そうという誓願とされている。(岩波仏教辞典 419頁を参照)
しかし、これもまた達成されることのない誓いだと思う。ではなぜそのような誓いたてるのだろうか。
達成を願うそこから行動が始まるからではないだろうか?祈願することは確かに大切だが、目の前でなにができるだろうか。戦争は酷いし、平和は大切だ…だが、我々はそれをどうやれば一歩前にすすめるのか?
マザーテレサは下記のように述べています。
世界平和のためにできることですか?家に帰って家族を愛してあげてください。
と…
『暗幕のゲルニカ』ではピカソの行動とキュレーターの八神瑤子行動が描かれている。2人の行動は訴えてくる。どうあるべきなのかを…
世界も自分も答えは見つからないが…いまこそゲルニカを観るべき時であり、自身を問うべきなのかもしれない。
このタイミングで読めて良かった一冊です。