流浪の民の国

ノマドは流浪の民、
家なき人のこと。
ノマドランドは
そうした人たちの
国ということになる。

大手証券会社が倒産し、
アメリカ全土を襲った
未曾有の経済危機。
バンで寝泊まりする
ノマドが急増した。

映画「ノマドランド」は
工場が閉鎖して職と家を
一気に失った未亡人、
ファーンがノマドになり、
働きながら旅する物語。

果てしない孤独、
夢も希望もない日々。
日雇いの肉体労働で
身も心もボロボロなのに
それでも生き抜いていく。

ノマドの人たちと出会い、
一時の安らぎを得る。
焚き火を囲み人生を語る。
目指すところはないのに
それぞれ旅立っていく。

「グッバイ」とは言わない。
「またね」と言って別れる。
事実、再びまた会えるのだ。
それがノマドであり、
どこにもノマドランドはある。

主人公を演じた
フランシス・マクドーマンド。
髪はぼさぼさ、みすぼらしい服、
おんぼろのバンで寝泊まり。
それでも凛とした佇まいが
悲しみを一層募らせる。

アメリカの片田舎の風景に
ノマドの人たちが愛おしい。
ノマドから教えられたのは
希望はあるなしではない。
作り出すものだということ。
すべては自分次第なのだ。