台風の目
夏休み、母と二人で
祖父母の滋賀の家から
東京の自宅に戻るとき、
台風が日本に来ていた。
米原で新幹線に乗ったとき、
台風は僕らの真上にあった。
台風は超特急とともに、
東へ移動していった。
「台風の目が真上にあるね」
母がそう言って空を指した。
丸い穴が空に開いていた。
それが台風の目だった。
台風の目は青かった、
ぽっかり空いた穴は青空。
その周りを暗い雲が
ぐるぐる回っていた。
名古屋、静岡、新横浜、
台風の目は真上にあった。
雨は降っていなかった。
東京に着いても目は真上、
僕ら親子を見下ろしていた。