阿部一二三と詩

オリンピックでは
何が起きるかわからない。
絶対的金メダル候補、
阿部詩が2回戦で敗れた。

技ありをとって勝利確実、
内股で一本となるはず。
それを返され体落としで
背中から落ちた一本負け。

詩の呆然とした表情、
その後の絶叫の大泣き。
観客の温かい詩コールにも
泣き崩れたままだった。

兄の一二三もさぞかし
ショックだったに違いない。
「泣きそうになった。でも
妹の分まで兄が勝つしかない」

順調に思えた勝利も準々決勝、
相手の膝があたって鼻血。
出血が止まらずそれも二度まで。
三度出血したら敗戦となる窮地。

だれが鼻血を予想しただろう。
止まらない鼻血に焦っても
「投げにいくしかない」と
見事な大内刈りで勝利した。

準決勝は延長戦を技ありで勝ち、
決勝は隅落とし技ありをとり、
袖釣り込み腰技ありで併せ1本。
完璧な勝利で金メダルを奪取。

オリンピックではいくら優勢でも
一瞬の油断が命取りになる。
アクシデントにも見舞われる。
何が起きてもおかしくない大会。
それほどすべての選手が必死なのだ。