仏顔の翔平くん

バッターボックスに入ったときの
大谷翔平くんの顔が仏様に見える。
打つぞという気合いを込めた表情でなく、
穏やかで安らかな表情をしている。

悪く言えばぼんやりした表情にも思える。
ところがどんな変化球も見逃さずに
ボールをバットの芯でとらえてしまう。
実はとても集中している顔なのである。

ランナーが塁にいなくても、
勝負を決する大事な場面でも
翔平くんの表情はいつもと同じだ。
微笑みさえ浮かべているような仏顔だ。

仏様の顔は尊顔や尊容と呼ばれる。
人を敬い慈しむ尊く聡明な顔である。
究極的理想としての悟りの表情であり、
穏やかな佇まいで楽を施す表情である。

ピッチャーはそんな翔平くんを相手に
心を奪われてしまうのではないだろうか。
抑えてやろうと思いながらもすっと、
打ちやすいボールを投げてしまったり。

煩悩というものがまったくない表情、
欲や迷いや不安といったものがない表情。
シンプルに来たボールを打つだけです。
翔平くんの仏顔に敵う人はいないだろう。