さくらんぼの実る頃

染井吉野の花が終わり、

小さな可愛い実をつけた。

さくらんぼの実である。

僕はイブ・モンタンが歌う

「らくらんぼが実る頃」、

「Le temps des cerieses」が

ふとわき上がってきてしまい

思わずくちずさんでしまった。


♬ Quand nous en serons

au temps des cerieses ♬

さくらんぼが実る季節は

鳥が陽気に囀り、僕らは

美しい娘に恋をしてしまう。

でも失恋はとても辛いもの。

切なく儚い恋の歌だけど、

本当はこの歌は反戦歌なのだ。


1871年パリ革命が起きて

市街戦で多くの市民が死んだ。

さくらんぼを籠に入れた

看護婦ルイーズが通りかかり

思わず負傷兵の手当をしたが、

戦闘に巻き込まれ命を落とした。

パリ市民は第三共和政に抗議し、

この歌を歌ったのである。


フランスではイブ・モンタンや

ジュリエット・グレコが歌い継ぎ

日本では宮崎駿監督の『紅の豚』で

マダム・ジーナ役の加藤登紀子が

フランス語で歌って有名になった。

人々が自由に恋のできる世の中、

平和な世の中にしようよと。

ただの恋の歌ではないのだ。


今も世界は紛争が収まらない。

イスラエルとパレスチナも

子供まで死に巻き込んでは

やる意味など何もないだろう。

どうか、両国の人々よ、

「さくらんぼの実る頃」を

みんなで歌って欲しい。

この歌のやさしさに触れれば、

戦う気など失せてしまうはず。

平和は自ずと訪れるのだ。

国連安保決議などより、たった

1つの歌が人の命を救うのだ。