不思議な夢の彫塑館
日暮里駅からふらりと
谷中に歩いて行くと
朝倉彫塑館がある。
玄関から入ろうとすると、
頭上に視線を感じた。
見上げると黒い人間が
こちらを見下ろしている。
よく見ると人間の彫刻。
あとで砲丸投げの選手の
彫刻だとわかった。
館の主は故・朝倉文夫。
明治生まれの彫刻家。
アトリエは天井が高く、
彼の代表的な作品が
幾つか展示されている。
眼前に現れたブロンズ像、
「墓守」は僕を見つめ、
何やら話しかけてくる。
黒く塗られた銅像なのに、
まるで生きているようだ。
巨大な大倉重信像やら
裸身の男や女たち。
伏せをする警察犬、
可愛がっていた猫など
空間に息づいている。
アトリエのある建物は
コンクリート造りだが、
住居は木造の日本家屋。
落ち着いた和室ばかりで、
美しい中庭を囲む。
素晴らしい建物に、
彫刻たちが住んでいる。
不思議な夢の建物。
こんなワンダーランドが
東京にあったなんて。
楽しいひとときだった。