カフェにいる女
地下鉄に乗っていたら、
目の前のご婦人が
トートバッグを提げていた。
そこにはカフェにいる
女性の絵が貼り付いていた。
どこかで見た絵、誰のだろう?
カフェにいる女と言えば、
ドガかマネかロートレックか、
ゴッホも何点か描いていた。
しかしいずれも画風が違う。
黒いドレスに身を包み、
頬杖をつき物思いに耽る。
金髪で肌の色はとても白い。
女性の手元には便箋と封筒、
赤ワインとインク壺も。
女性の白い肌を見ていて、
乳白色だとはっと気がついた。
あ、藤田嗣治の絵だと。
“Au cafe”「カフェにて」だ。
藤田の描くフランス女である。
女は何を考えているのか?
便箋は裏返しでインク染みが。
恋文を書こうとして辞めた、
憂う女心が浮かび出る秀作。
ゴッホやドガに全く引けを取らない、
いや、それらを凌ぐ絵だと感服。