小林秀雄の講演

小林秀雄という文芸評論家を
知っている人は多いだろう。
『無常といふ事』『ランボオ』
『モオツァルト』『ゴッホの手紙』など、
詩や文学の文芸批評だけでなく
音楽や絵画といった芸術批評まで行った

ひと昔前までは小林秀雄の批評文が
大学入試テストに出題されるとあって、
読む機会は多かったように思う。
高い知性と教養から成り立つ
小林の難解な文章に
髪の毛が逆立つような思いをしたものだ。

小林秀雄の評論を紐解くことは
知識人になった気がして、
あの頃、背伸びをして読んでいた。
しかし、その内容が頭の中に
残っているかといえば
甚だ「?」マークでしかない。

ところがいつだったか、
小林秀雄の講演を何かで聴いて、
内容のわかりやすさと
噺家のような語り口調によって、
難解な文章のことなど
何処かに吹っ飛んでしまった。

一瞬にして小林秀雄の
愛好者になってしまった。
「煙草を辞めた話」*など、
神田生まれの江戸っ子らしい
痛快な話しっぷりで笑いが絶えないが、
内容は禁煙の本質を突いている。

「原稿書きはリズムである。
考えさえあれば書けると
言ったものではない。
そんなことをいう輩は素人。
バットを持てばホームランが
打てると思うのと同じことだ」

「煙草を辞めた途端に
文章を書くリズムがなくなり、
間がなくなってしまい
まったく原稿が書けなくなった」
小林の高尚な評論は
タバコによってもたらされていた!?

https://www.youtube.com/watch?v=K6fZxStuTLE