試乗車の罠

車を買い換えようと、妻と
試乗車を乗りに行ったことがあった。
場所は六本木辺りだったろうか。
クルマは欧州のAだった。

ディーラーに行くと
試乗車が用意されていた。
営業マンも同乗するのかと思いきや、
ボクと妻だけで試乗してくださいという。

事故でもしたら大変だと
不安に思いつつも二人だけで楽しめる。
さっそくAの新車に乗り込み、
六本木道路を走った。

乗り心地はとても良かった。
今乗っている自分たちの車と比べ、
どこがいい悪いだとか、
楽しく自由に話していたと思う。

ディーラーに戻ってきて、
いかがでしたか?と聞かれ、
良かったですよと答えながら、
何かおかしいと感じた。妻も同じだった。

あっ、盗聴されていた。
自分たちの会話は盗み聞きされていた、
何かの話でそう感じたのだった。
まったく持って嫌らしい営業である。

背筋が寒くなった。
犯罪まがいの試乗ではないか?
妻とボクは顔を見合わせ、
Aのクルマだけは買わないと誓った。