清方の美人画
たった一枚の絵に
魅せられてしまった。
それも絵の中の
秀麗なる美人に。
明治生まれの日本画家、
鏑木清方が描いた
「築地明石町」の
和服姿の若い女性。
外人居留地となった
異国情緒あるこの街、
赤い鼻緒の下駄を
つっかけて外出。
洋髪の白い顔に
ふと浜風に吹かれ、
それとなく見やる
流し目が美しい。
鏑木清方の絵には
物語が込められている。
挿絵画家だったからか、
小説を読むような絵。
絵の中の女性は
静止してなどいない。
絵なのに動くのだ。
これから始まる物語の
主人公として。