大手鞠と紫陽花
五月晴れの穏やかな午後、
那須のパン屋さん、
クローチェの庭でランチ。
ドリップされた薫り高い
コーヒーを飲みながら、
上質なあんパンをいただく。
前方に大手鞠の樹があり、
大きな白い花がたくさん。
絵に描きたいほどの
見事な咲きっぷりである。
ゴッホならどんな
絵にしてみせるのだろう。
お母さんの手伝いをしている
お嬢さんがやってくる。
「あたし、あの花、
ずっと紫陽花だと思ってた」
大手鞠の花を指して
笑いながら言う。
痛快な笑顔に癒やされる。
確かに一輪だけ見れば
紫陽花に見えなくもない。
でっかい紫陽花だと
子供心に自慢だっただろう。
お客さんにそう伝えていた。
桜や紅葉の緑の葉は
陽の光に照らされて
透き通って美しい。
緑は最高に見える色、
人間は緑を見るために
生きているようなものらしい。
真っ青な空に白い大手鞠、
光に透き通る緑の葉。
穏やかな五月の休日。
クローチェにはいつも
悠久の時が流れている。
ピアノソナタが聞こえて来る。