森鴎外を読む

明治の文豪、森鴎外の小説を
読んだことがなかった。
鴎外死して100年ということもあり、
古本屋で『山椒大夫・高瀬舟』の
文庫本を見つけたので買って読んだ。

鴎外が50歳前後に書いた短編が
この本に11作品収まっていた。
どれもこれも理知的で簡潔な文章と
仏語や独語、英語など外国語を
交えた作風がユニークに思えた。

鴎外が欧州留学をした成果が
存分に表れている作品ばかり。
しかも医者である鴎外の
人間を見る科学的考察の鋭さと
客観的に書こうとする態度が潔い。

自分とはいかなるものか、
友人とはいかなるものか、
恋愛とはいかなるものか、
罪とはいかなるものかなど、
哲学的に突き詰めていく。

無闇に情に流されず、
徹底的に個人主義にこだわる。
人間嫌いとアイロニーが
文章を鴎外色に染めていく。
今頃になって鴎外を知ったが、
死ぬ前に読めて本当に良かった。