先輩の一周忌
心底優しかったラグビー部の先輩、
大出さんが亡くなって1年が過ぎた。
「いつでもスナック大出にいらっしゃい」
お葬式の日、ママさんからそう言われ、
とはいえ、なかなか伺えなかった。
一周忌、後輩を連れてご自宅に伺った。
大出さんの遺影を前に手を合わせる。
線香に火を付け、思いを馳せる。
運動神経抜群のスクラムハーフ、
明るく楽しく余計なことを言わない。
キャプテンとして部員をまとめ、
OB会でも主将的存在だった。
大出さんの家にはママさんはもちろん、
二人のお嬢さんと旦那さんたち、
下のお嬢さんの赤ちゃんもいて賑やか。
写真の大出さんはにこやかな笑顔で、
僕らと家族の酔っ払いを見ている。
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
今や休部となっているラグビー部を
復活させるべく活動したその頃、
校長先生に裏切られて失望したとき、
大出さんが飲み連れて行ってくれた。
馴染みの「真佐」という小料理屋さん。
大出さんの優しい言葉に救われた。
「真佐」は大出さんの行きつけの店。
この話をした途端に二人のお嬢さん、
ママさんが涙を流して泣き出した。
家族の思い出の店でもあったのだ。
「真佐と聞くとスイッチが入っちゃう。
なんだか泣けてきちゃうの」と3人。
今もとっても温かい幸せな家族なのだ。