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意見交換の場が後押しするICT化・DX化
▷登場人物のご紹介
◎語り手
お名前と役職:写真席順で記載
前列右端:山下 敦 様(居宅支援事業所管理者、生産性向上委員会委員長)
前列真中:五味 伸治 様(特別養護老人ホーム副施設長)
前列左端:眞鍋 哲子 様(主任看護師)
後列右:佐藤 麻樹 様(事務長)
後列左:今村 美里 様(養護老人ホーム主任生活相談員)
◎聞き手
名前:中浜 崇之(なかはまたかゆき)
ものさしを合わせる介護福祉士として特養やデイサービスで現場職や管理者として勤務。『自分らしく死ねる社会を創る』をコンセプトにテレビ東京『TOKYOガルリ』やTBS『好きか嫌いか言う時間』への出演や『週刊東洋経済』や『夢を育てるみんなの仕事300』(講談社)に取材記事が掲載されるなど、介護福祉についてポジティブな視点で発信している。
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▶︎記事の要約
聖ヨゼフの園では、時代に合わせての変化とこれからの福祉業界のDX化が、職員の働きやすさ、ひいては利用者様の幸福にもつながると考え、ほむさぽを導入。同時に生産性向上委員会(当時はほむさぽ委員会)を立ち上げ、施設内の様々な機器やソフトに関しての導入や連携の相談をはじめ、ソフトや機器に関しての意見交換なども積極的に行い関係性を深めている。
ほむさぽ導入のきっかけと委員会の立ち上げ
中浜(以下、中):
今日はよろしくお願い致します。
前回の木戸理事長様へのインタビューでは、ICT化やDX化を経営者という目線でお話しいただきましたが、今回は現場レベルでのお話をお聞かせいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
全員:
よろしくお願いします。
中:
まずは、ほむさぽを導入する事になったきっかけについて教えてください。
眞鍋(以下、眞):
元々ほむさぽさんに出会う前の2017年頃に、北九州市の国家戦略特区の中で介護ロボット事業の実証施設として、見守りセンサーやインカム、リフトなど、たくさんの機器を導入し、どこにムダやムラがあるかに関して精査していました。
そんな中で、ほむさぽさんと出会う機会がありまして、すでに導入している介護ロボットも含めて法人全体のICT化をさらに進める為、ほむさぽを導入する事になりました。
中:
先に介護ロボットに関して積極的に導入していたという事もあり、ほむさぽを導入する際の抵抗感は低かったのでしょうか?
眞:
初めは正直なところ、現場としてほむさぽ導入への抵抗感はすごくあって、本当に必要なのか、自分たちだけでどうにかできるのではないか、さらには、金銭的負担などを心配し、まずはトライアルで始めさせていただきました。トライアルは比較的長期間でやらせていただいていたのですが、コロナが到来したことをきっかけに導入に踏み出したという感じでした。
中:
介護ロボット事業の実証施設をされていても、ほむさぽを導入することに抵抗感はあったのですね。
眞:
すごくありましたね。たくさん話し合った記憶があります。
佐藤(以下、佐):
ITに詳しい職員が何人かいたため、そういう人がいるのであれば必要ないのではないかという声も結構ありましたね。
中:
それでもほむさぽを導入しようという流れになったきっかけはあるのでしょうか?
山下(以下、山):
まず、この先人材の確保が難しくなることが目に見えている中、聖ヨゼフの園の伝統や事業を守る為にはDX化などの変化が必要になると、理事長からの話もあり感じていました。そんな中、コロナの影響で対面での面会が厳しくなってしまい、急遽LINEでビデオ通話を行うなどの対応をしていました。その際に、ほむさぽ導入は我々福祉事業者にとっては時代の変化に合わせて事業を安定化させる手段であり、また職員の働きやすい職場づくりには欠かせないものになるだろうという話し合いが行われ、ほむさぽの職員の方にアドバイスをもらいながらトライアルを始めました。
中:
生産性向上委員会も、そのコロナのタイミングで立ち上げたのでしょうか?
眞:
そうですね。委員会を立ち上げて、まず何に困っているか、どんな事がDX化できるかを精査しようという話になったんです。それが、生産性向上委員会の前身であるほむさぽ委員会立ち上げの流れになります。
中:
立ち上げた際の委員会メンバーは今いらっしゃるメンバーだったのでしょうか?
眞:
今の委員会メンバーは各部署の責任者クラスなのですが、当時の委員会メンバーはITに強い方たちをチョイスした形でしたね。
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意見交換でお互いを高めあえる関係
中:
その委員会立ち上げの際、ほむさぽはどのように関わったのでしょうか?
眞:
ほむさぽさんは、まず法人内で今1番どこに困っているのか調査してくださいました。
中:
委員会の立ち上げと、ほむさぽの法人内の調査を終えた後は、どのような活動を行ったのでしょうか?
佐:
特別養護老人ホーム(以下、特養)では記録ソフト以外に紙ベースで記録をしているものも多かったため、パソコンでの記録に変えつつ、活用しきれていない記録ソフトをしっかりと活用する事から始まりました。その他にも、パソコンに弱い職員向けにほむさぽの方が講師になってExcel教室の開催や、調子の悪いWiFiの対応などをしてくださいました。
中:
その他導入したものはありますか?
眞:
他にはSlackを入れてもらいました。私は看護師なので、コロナ渦において職員全員に感染予防の認識をもってほしいという思いと、対策するにあたって掃除の方までしっかりと発信を届けたいという思いがあり、それを理事長やほむさぽさんに伝えたところ、Slackがタイムリーな情報共有や職員全体への発信という意味で良いのではないかという話になり導入しました。
中:
今でも委員会を定期的に行うことはあるのでしょうか?
眞:
毎月ヨゼフだけの委員会を開き課題をあげた後、別日にオンラインでほむさぽさんやウェルモさんと一緒に検討しています。そのため、月に2回委員会の活動を行っています。
中:
その委員会では、どのようなお話をしていらっしゃるのでしょうか?
眞:
これまで様々な機器やソフトを導入した経験から、職員の中で「こういう機器を導入したら、こういうことができるのでは?」という意見が生まれやすくなっているため、そのような意見交換をよく行っています。あとは、今ちょうど「ほのぼの」(記録ソフト)をもっと使いこなそうという流れになっていて、先日記録ソフトの担当の方に来ていただいて「このソフトはもっとこのような使い方がいいのでは?」という話をしました。
五味(以下、五):
その時は、こちらからソフトの改善点を伝えたつもりが「いや、実はできますよ」なんて話をされて、逆に教えてもらうことになりましたね。
中:
ほむさぽや、ソフト制作側からすると事業所の方からのご意見というのは、とても貴重だと思います。
眞:
理事長をはじめ、ヨゼフでは自分たちが取り組んでいることを、情報として外部に発信する事で、他事業所の役に立てばという考えがあります。ですから、ほむさぽさんや記録ソフトの担当の方には「もしかしたら痛い指摘をするかもしれないですが、私たちが困っていることは、他の事業所でも困っている事なのだと思います。この指摘によってソフトをよりよい物にしていただき、どんどん世の中に広めていってほしいと考えています。」と伝えています。
中:
意見を伝える時に言いづらいなと感じることはなかったのでしょうか?
五:
やはり敷居が高いイメージがついてしまうと、施設側から意見が言いづらくなるのだと思います。ですが、ほむさぽをはじめ担当の方はとても話しやすいですし、意見を求めているなと感じることもあるので、言いやすい雰囲気にしてくださっているのだと思います。
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外部の専門家に相談できるメリット
中:
定期的な委員会で相談や意見の交換をしているとのことですが、具体的にはどのような場面でほむさぽに相談したり依頼したりしているのでしょうか?
五:
現在は、先ほどお話した実証実験時に入れた機器が古くなっているので、次の段階をどうしていくのか、委員会として先を見て動かなければと考えているところです。
ほむさぽさんにはどのような機器があるのかを相談し、情報を持ってきていただいた後、施設として選択しトライアルしていくという流れになるかと思います。
中:
数ある中から自分たちだけで選定するのは大変ですよね。
五:
そうですね。その数ある中から、プラットフォームにあった物を選定していただけるので本当に助かっています。また、情報を持ってきてくださった際もそれぞれどのような一長一短があるのかを教えていただけるので、トライアルに進みやすくなりますね。
中:
専門家から情報を聞くという事は重要ですね。
五:
そうですね。私たちが福祉機器展に見に行って気に入った機器があった際も、その危機の知らない情報や施設にある別の機器との連動まで考えて教えてくださるので、施設のソフトや機器全体のイメージ図のなかからアドバイスがいただけることがありがたいです。
そのように全体のイメージが共有できているので、新しい機器を導入する際に今どのような方向に向かっていて、なぜ必要なのかを現場に説明しやすいというのもあります。
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眞:
あとは、どうしてもお金がかかるものが多いので、IT業界の動向なども考えてどの機器から対応していくべきかの優先順位を考えてくださるというのもありがたいです。私たちだけでは、今の法人のベストを選ぶことが難しいこともあると思うので、全体像を見て優先順位をつけながら必要なお金を使っていく事ができているので助かります。
中:
やはり外部の専門家に入ってもらうことのメリットは大きいですか?
山:
はい。我々の業界は、ITに詳しい人ももちろんいるとは思うのですが、詳しくない、よくわからないという人の方が大多数だと思っています。その中で仕事の合間に調べてICTを取り入れていくとなると時間や労力の面で負荷も大きいため、外部の詳しい知識を持った人が伴走してくれるというのは大事なことだと思います。
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現場に浸透させていくためには
中:
先ほどまでは委員会の活動についてお聞かせいただきましたが、ここからは現場の様子についてお聞きできればと思います。
委員会での決定を現場にどう落とし込んでいくのかという課題があがるかと思うのですが、そこはどのように乗り越えたのでしょうか?
今村(以下:今):
きっかけとしては、委員会の再編成がありました。
先ほども話にあったように、再編成前は役職のある人が委員会メンバーではなかったので、全体に指示が通りにくかったように思います。
山:
一番ITに詳しくて様々な対応をしてくれていた職員が退職したというのもきっかけとして、各部署から1人ずつ役職者にメンバーとして入ってもらうように変えました。
その後は全部署に情報がいきやすくなり、指示も通りやすくなったように思います。
中:
委員会のメンバーが役職者の方になると、確かに指示は通りやすくなると思いますが、逆に現場の課題をキャッチアップする事が難しいように思いますが、その点はどう対応したのでしょうか?
五:
従業員にとって、Slackでのやり取りのハードルを低くしているという点が大きいと思います。堅苦しい内容が一方通行的に送られてくるというものではなく、日常の些細なやり取りから、理事長の理念の共有まで様々なやり取りをSlackでしています。それが、発信した際に生の声を拾い、現場の課題をキャッチアップする事に繋がっているのだと思います。
中:
Slackを現場に浸透させるための工夫をもう少し具体的に教えていただけますか?
眞:
感染症の蔓延にともなってチーム一丸となって対策をするうえでSlackを導入したのですが、情報を見る習慣がなければ意味がないと考え、理事長に1ヶ月程度とにかく毎朝発信してくださいというお願いをしました。
中:
たしかに理事長から発信があれば、見る習慣はつきそうですね。
眞:
その他には医療的な情報の発信や事務長による発信も加わり、職員にSlackをチェックする習慣がつきました。一方で、発信する人が限られてしまっているという課題も残りました。
中:
その課題にはどのように対応したのでしょうか?
眞:
犬を飼ったのが大きかったと思います。
中:
犬ですか?
眞:
はい。法人としてまるちゃんという犬を飼い始めた際に、Slackの中でまるちゃんのお世話グループができ、事務長をメインに仕事の中でまるちゃんをどう育てていくかという話をグループの中でするようになりました。
中:
なるほど。それによって決まった人の発信をチェックするだけだったSlackが、様々な職員が発信できる場になったのですね。
眞:
はい。今は1人1人どの職員もそれぞれのグループの中である程度発信ができるようになりました。
中:
犬をみんなで飼うには…と自分事として考える機会や日常的な会話をSlackで行うことで、職員の方々にとってのハードルが下がったのでしょうね。
その他にどんな会話があるのでしょうか?
眞:
委員会メンバーからの報告や、困っていることの発信、ご利用者の移乗・移動方法について写真での共有や、注意事項の共有にも使っています。あとは、コロナで集団での研修ができなかった際は研修動画の共有や、健康診断の採尿方法の動画を共有、職員からの差し入れの報告などもあります。他には、事務長が世の中の情報なども積極的に発信してくださったりしていますね。
中:
本当に日常の支援に根付いた事から、世の中の事まで本当に様々な情報の発信場所になっていますね。
今:
そうですね。Slackは情報共有の中で一体感を生んでくれたように思いますね。
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ICT化・DX化があたりまえになる
中:
前回理事長のインタビューの際に、ICT化やDX化をすすめる理由は職員の方の働きやすい環境を作るためであり、それがご利用者様の満足度や地域への貢献に繋がっていくというお話をされていてとても印象的でした。皆様の実感としてどのような変化があったかをお聞かせください。
眞:
昔は嫌だ、ダメだと言う事が本当に多かったなと思っています。そんな中、介護現場で最初に行ったのは、医務室と一緒に傷がある人の処置を写真に撮影し、記録ソフトに入れるという事でした。そこから、事故報告にもあがるようにするといったソフトの横のつながりが増えていったという事は覚えています。
山:
あとは、新しいものを入れていくことへの抵抗感が本当に少なくなったなと感じています。「これを導入したら便利になるからこうしよう」という提案がすんなりと通るようになっていると思いますね。
佐:
今は委員会としても生産性に意識が向いているように思います。法人全般の業務改善や職員の働き方等、様々な面に着目できており、検討する内容が充実してきているように思います。
中:
はじめは小さな1歩でしたが、ICT化・DX化に積極的に取り組み浸透させていったからこそ、さらに生産性をあげるための新しい話し合いができるのでしょうね。
今日はお時間いただきまして誠にありがとうございました。
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◾️聞き手、中浜のあとがき
慣れない・知らない事を質問する事は羞恥心や不安感が伴いがちですが、ほむさぽはそれらを取り除き、なんでも相談ができると評価されていると感じました。
また、新しいものを取り入れても活用されなければ意味がない中で、誰もが興味関心をもてるような仕掛けや、身近なものにしていく過程を聞き、理事長はじめ職員の皆様の一歩の丁寧さにとても感心いたしました。
新しいシステムや機器の導入・活用というと、環境が変わる事で大きな一歩が踏み出せると期待する人もいるかもしれません。
しかし大事なのは大きな一歩ではなく、誰もが出来そうな丁寧な小さな一歩なのだと思いました。
目線を合わせることの重要性を改めて考えるきっかけになりました。
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