見出し画像

プロコフィエフ「交響的協奏曲 ホ短調 作品125」でチェロの美しさを再発見。宮田大×読響_2023年10月29日

先週末は、宮田大さんのチェロを聴きに読響のマチネに行っていました。

メロディがやや複雑な1曲目のプロコフィエフ「交響的協奏曲 ホ短調 作品125」は、私にとって「カッコよくて難解な曲」という第一印象でしたが、すぐに響きの多様さに魅了されワクワクしながら聴きました。

「チェロってこんな弾き方もできて、こんな音も響く楽器なんだ!」という感動に満ちた発見を得たのです。

以前、弦楽誌「サラサーテ」さんで某アーティストさんにインタビューさせていただいたときに、「楽器と仲良くなる」という発言があったのですが、この曲の宮田さんとチェロとはまさにその状態。
呼吸がピッタリと合い、意思疎通どころか、楽器のほうから
「ねえ、こんな響きもあるんだよ!」
「そう弾くと、こう響くよ!」
と、奏者に楽しそうに語りかけているかのようでした。

メーンパートをチェロと別の楽器とで交互に弾くときも、相手がオーボエなら小鳥のさえずりのように響き、トランペットなら海底から空高く突き抜けるように響く。
オーケストラも含めて、楽器と奏者が一体となって響きを楽しんでいることが伝わりました。

(今年の3月5日にトッパンホールでクリスティアン・テツラフさんのヴァイオリンでバルトーク「ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz76」聴いたときに、その複雑でありながら躍動感のあるメロディに、無邪気な子どもとヴァイオリンが出会った瞬間を見たことを思い出します。)

この曲はチェロを弾く人が聴いたら、さらに面白くてたまらないんだろうなあ!

演奏中に宮田さんが汗を拭くとき、自分の顔よりも先に楽器を拭いていたことも印象に残っています。

今回のプロコフィエフ「交響的協奏曲 ホ短調 作品125」はあまり頻繁に演奏される曲ではないそうですが、宮田さんたっての希望でプログラムされたそう。私は、宮田さんの演奏でこの曲を聴くことができて本当に幸福でした。

           ***

そして後半のハチャトゥリアンの「ガイーヌ」からの6曲と、ストラヴィンスキーの「火の鳥」は、個人的に思い出のある曲。いずれもバレエ組曲ということもあり、踊り出したくなるほど楽しみました。

第129回横浜マチネーシリーズ
2023 10.29〈日〉 14:00  横浜みなとみらいホール
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
チェロ=宮田大
プロコフィエフ:交響的協奏曲 ホ短調 作品125
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」から“ゴパック” ”剣の舞” “アイシャの踊り” “バラの乙女の踊り” “子守歌” “レズギンカ”
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

アンコール
カザルス:鳥の歌

私事で恐縮なのですが、2020年3月に上梓したチェーホフ作「桜の園」のノベライズを執筆していた間、朝から晩まで、耳と思考が空いている全ての時間をハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」を聴きじゃくって過ごしていました。

スケジュール的に、どうしても1か月くらいは小説を書きながら編集者の仕事もする必要があったので、勝手にサントラに決めた「仮面舞踏会」を聴き続けることで「桜の園」の想念に半身あるいは片足だけでも浸しながら、現実をこなしていたわけです。

たまたまそのアルバムの中に収録されていた「レズギンカ」という曲に、執筆を助けてもらいました。

レズギンカはコーカサス地方の山岳民族の舞踊で、後半になるにつれ曲調がダイナミックに盛り上がっていきます。舞踏会で演奏される際は、フロアに出ているカップル同士がダンスのテクニックやスピードを競うように踊る、会場の盛り上がりが頂点になろうという曲です。

「桜の園」では3幕の舞踏会の場面で、焦燥感と不安にかられるラネーフスカヤの耳にレズギンカが聴こえてくるシーンがあります。
これはチェーホフの原作にもト書きされていて、アップテンポな楽しいメロディを対比させることで、ラネーフスカヤの心境を際立たせる効果がありました。

小説で触れたのはたった数行ですが、実際にこの曲を聴きながら書いたので、その時に感じた喧噪の中で焦燥感に飲まれている孤独をとてもよく覚えています。

読響の演奏は、生のオーケストラの演奏にまさるものはないとしみじみ感じる楽しさで、まさに踊り出したくなるのを堪えながら聴きました。

ストラヴィンスキーの「火の鳥」も、一時期CD(アバド版)を浴びるように聴いていたので、感動がひとしおでした。


【ききみみ日記】
★今回で投稿128回目になりました★
オペラ・クラシック演奏会の感想をUPしています。是非お越しいただけますとうれしいです。
(2022年10月10日~2023年1月15日まで101回分を毎日投稿していました)


##関連記事

https://note.com/hommaayako/n/nf6f7a70b45d4?magazine_key=m7aa722ae8434


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?