桃太郎に秘められた魅力
1 はじめに
教材を通して新たな価値観に気付かせたり,読書を楽しいと感じさせるきっかけはいくらでもあります。
例えば,私は小テストや毎日使う振り返りシートの裏に読書の紹介として導入や山場を印刷したり,これまで子どもが作ったポップを何かにつけてのプリントの裏面に貼っています。どうしても学習活動の中で時間差が出てきますが,早く終わった子どもや文章を読むことが好きな子どもが目を通します。その中で読書の幅が広がったり,読みたい本が見つかったり,本に興味が無かった子が文章に目を通しているのを見ると,嬉しくなります。
即効性がなくても,積み重ねて文章に触れる機会があると言うことは大切です。あとは,本を読んだり文章に心揺さぶられるというのはタイミングも大きいです。長い目で見て取り組んでいく必要があるでしょう。教材を通して新たな価値観に気付かせたり,読書を楽しいと感じさせるきっかけはいくらでもあります。
さまざまな工夫が考えられますが,教材の中で意図的に取り上げるどく読書教材とその有効な使い方について紹介したいと思います。
2 教材としての桃太郎
教科書の教材には,そこで取り扱われている意味があり,価値があります。
それは,単元の目標とする心情の変化や描写の読み取りに提起していると考えられていたり,書き方の指導に適していると考えられたりなどと様々です。
この仕事の魅力は,教材の価値を深めたり他の教材と重ねて学習してより大きな効力を発揮したり,文章に出会わせることができることです。これは授業者のみができます。
教材の中で,このことを考えさせたいときにはこの教材も併せて取り扱いたいというものが,教材研究や日常の読書の中で出てきます。ぜひたくさんストックをしておき,授業で還元していきましょう。
私が好きなものを一つ紹介したいと思います。
仮定として,単元の目標のなかに「見方や考え方を広げる」という目標があったとします。
見方や考え方を広げるには多面的・多角的に視野を広げていける教材として私のイチオシが芥川龍之介の「桃太郎」です。
作者自体は有名なので読んだことがある人もいるかも知れませんが,この作品は意外と知られていません。
桃太郎といえば,悪い鬼を桃太郎が懲らしめて,村が裕福になるというのが王道のストーリーだと思われがちです。
実際には絵本によって描かれ方が違うのでこのあたりを古典の学習や読書教材,調べ学習で取り上げるのなど工夫の仕方次第で幅が広がるので桃太郎はその点も魅力的です。
なにより,どれだけ読書週間が身についていなくても桃太郎についての知識が0の生徒はいないでしょう。
価値観の変容や多角的な見方を広げるという意味ではその点も非常に大切なところになることもあります。
話を戻しますが,芥川龍之介の「桃太郎」はひと味違います。
最近は視点を変えたリライトがはやって多くの作品が元の作品の世界観や価値観を変えてみたり(壊したり笑)するものがありますが,芥川龍之介は桃太郎の世界観を描写豊かに変えて表現しています。
読んでみて授業を構想する手伝いになるとも思いますし,子どもに読ませて感想を聞くだけでもおもしろいかも知れません。
多様な価値観やものの見方を広げさせるという意味では,被害者としての鬼の視点もおもしろいですね。
桃太郎が自堕落で怠け者という設定は絵本の中にも意外と多いですが,芥川龍之介は舌を巻くような設定と描写で表現します。
有名な文学者の作品を読む動機付けとしても良いかも知れません。
3 たくさんの教材と出会わせる
教科書に載っている教材は,それはそれで大変な価値があり,活用したものです。
ただ,先生方もそれぞれの専門性を持ち合わせていて,実際に授業をされるのは先生方です。
ぜひ,ひらめいたアイデアやわくわくするようなびびっとくる直感大切にしてほしいと思います。
なにより,先生方も本をたくさん読んで知見を広げ,幅の広い授業展開ができることも期待できるでしょう。
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