夜。眠れなくて家を出た。もう日を跨いで1時間は経つと言うのに、外は街灯と建物の明かりでキラキラとしていた。 コンビニで、エナドリと菓子パンを流れるような手付きで取ってレジに向かった。電子マネーでさっさと支払いを済ませて帰宅する。 誰がいる訳でもないので乱雑にドアを閉めて、テレビを付けてアニメを見始める。深夜特有の変に昂ったテンションのせいで、1人でゲラゲラと笑ったり、酷く泣き始めたりして忙しい。 「……何やってんだろ」 エナドリ1缶が尽きた頃、唐突な虚無に私は支配され
朝。アラームで脳を揺すり起こされる。まだスッキリとしない脳でスマホの通知を確認する。 表示された通知のうち一つに、カレンダーから「お誕生日おめでとうございます!」の文言。 そうか、今日は俺の誕生日だった。その通知を見てようやく思い出す。 布団から出るには、未だ勇気の要る寒さが部屋を満たしていた。そんなものだから、俺は冬の朝が嫌いだ。 人肌を感じる時間が全く無いものだから、この布団の温もりだけが、今の俺にとっては唯一の依存対象。 この温もりが、体と布団を縫い付けて離
教室の隅、微かな煌めき。 けれど、当時の私には充分すぎる程に美しい光だった。 小学校の頃に感じたあの光が、今私の隣に居る。それだけの事実が、私を満たす。心の中にとぷとぷと注ぎ込まれる幸福が、私の何もかもを満たしていた。 視界も、思考も、聴覚でさえ。私の全ては彼のもの。 他人から疎ましそうな目線を送られることも少なくはなかったが、それが気にならない程には彼以外が見えていなかった。 「おはよう」「また明日」「おやすみ」 そう彼の唇が動く度、私は耳から侵されていく感覚